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第二章
14.人見知りな彼女
しおりを挟む「初対面なのにご挨拶が出来なくてごめんなさいね。ミカちゃんは人見知りが激しくて……」
「あっ、いえいえ。彼女の名前はミカちゃんっていうんですね」
「えぇ」
私もこの幼き彼女と同様、人見知りだ。
……いや、昔は男女問わず積極的に話していた。
彼女からあの言葉を言われなければ、今でも自分らしくいられただろう。
でも、一枚ヴェールを被りたい気持ちもわかるから、ソファの正面にしゃがんで声をかけた。
「ミカちゃん。こんにちは。これからよろしく……あれ? この前、ショッピングセンターで迷子になってたあの時の……」
彼女の顔を見た途端、先日の記憶が引き出された。
二つ結びの髪にぱっつん前髪、丸く澄んだ目に小さな鼻、ぷっくりほっぺの彼女はつい先日アルバイト先のショッピングセンターで迷子になっていたあの子だったから。
「……」
「お姉さんの事を覚えてる? ……あっ、あの時はカエルの被り物をしてたから私の顔なんてわかる訳ないか。……えっとぉ、私はショッピングセンターでミカちゃんが迷子になってた時に受付まで連れて行ったカエルだよ」
「……」
「お姉ちゃんの名前は結菜だよ。これから毎日遊びに来るから仲良くしてね~」
「……」
隣から一生懸命話しかけても、彼女は私の声が通り抜けているかのように遠い目をしている。
正直心が折れそうだった。
私だってコミュニケーションが得意な訳じゃないのに、そうせざるを得ない状況に追いやられているのだから。
すると、林は結菜のある言葉に引っかかった。
「先日ミカちゃんがショッピングセンターで迷子になった時に受付に送り届けてくれたのは早川さんだったんですね。こんな偶然があるなんて……」
「あっ、はい。中階段で大泣きしてたからどうしたのかなと思って」
「あの日はショッピングセンター内のピアノ教室が終わった後に急にフロアに飛び出して行っちゃって。後を追ったのですが、なかなか見つからなくて40分ほど探していたら店内放送が流れたんです」
「あの時はお兄ちゃんと呼んでいたので、てっきりお兄さんを探しているかと思ってました」
「ご存知の通り、兄は仕事が忙しくて彼女の世話を出来る状態ではありません。でも、ミカちゃんにとっての一番は兄。それどころか、私達スタッフがどんなに一緒にいても、二番にも三番にもなれないんです」
「それはどういう事ですか?」
「きっと彼女に信頼されてないんだと思います。私達は時間になったら居なくなる程度の認識でしょう。あっ、あと彼女は脱走歴があるので、その辺は留意していただければと思います」
「脱走歴ですね……。わかりました。注意します」
ぼんやりとした無気力な目に、4歳とは思えないくらい物静かな態度。
散弾銃のように全身を使って泣き喚いていたあの時とは別人のような様子に不安が積み重なった。
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