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第四章
34.麗しい瞳
しおりを挟む「ミカちゃんの好きな食べ物って何かな」
「んー……、ハンバーグかな? どうしてそんな事を聞くの?」
「1日でも早く心を掴みたくて。まだ一度もマトモに喋れてないし……。それに、日向が帰ってくるまでは2人きりでしょ」
「ミカの心を掴みたいなら、あれこれ考える前に本音でぶつかってみれば?」
「本音で……ぶつかる?」
「この家の使用人じゃなくて友達みたいにさ。対等に話し合える関係ならきっと心が掴めるんじゃない?」
「なるほどね。年上目線で見てたから上手くいかなかったのかな。それなら接し方を少しずつ変えていこうかな」
確かにそこまで考えてなかった。
大人に近づくにつれて、いつしか自分目線で物を思うようになっていたから。
私が一線を引いて人と付き合っていたように、彼女にも自然とそうさせてしまっているのかな。
結菜がしばらく黙り込んで考え込んでいると、日向は上目遣いのまま意地悪口調で言った。
「でもさ、ミカの心より俺の心を先に掴んでくれないと困るな」
「へっ?!」
「俺は目線すら浮気させないよ。お前のナンバーワン以外興味ないから」
そう言った瞳があまりにも麗しかったせいか、まるで催眠術でもかけられてしまったかのように目線が外せない。
普段はテレビモニター越しで観ていたあの高杉悟が、いま私だけを見つめている。
それだけでも緊張するのに、私のナンバーワンしか興味がないって……。
「な……、なに言ってるのよ。冗談やめてよ。……あ、あんたに興味ないから」
赤面したまま目線を逸らして動揺しながら言い返すと、彼はプッと吹き出して肩を揺らした。
「なに真に受けてんの? 冗談に決まってるじゃん」
「へっ? 冗談……」
「出演してるドラマのセリフを試しに言っただけなのに、何マジで受け止めてんの?」
「ドラマ……のセリフ……」
「でもさ、ちゃんと本音を言えてるね。すごい進化してる」
「あっ! 本当だ。相手が日向だから言いやすいのかも」
「何だよそれ。イケメンレベルSランクの俺様が言ってるんだから、少しはドキドキしてくれないと」
「は? 私があんたにドキドキする訳ないでしょ。別に男として意識してないから」
口を尖らせて突っぱねたけど、見つめられた7秒間は恐ろしいほど目線が外せなかった。
彼は幼少期から名子役として活躍してきたからちょっとした演技くらい朝飯前なのに、私はそれを見破れないくらいマジで受け止めていた。
すると……。
「お兄ちゃん、おしっこー……」
彼と小競り合いをしてる中、ミカちゃんが目をこすりながらリビングにやってきた。
そこでハッと現実に戻る。
「あー、目が覚めちゃったか。寝る前にちゃんとトイレに行かなかったの?」
「ううん、行ったよ。また行きたくなっちゃったの」
「さてはジュース飲み過ぎたな。トイレ行ったらまた一緒に寝てあげるから早くトイレに行こ」
「うん……」
彼はミカちゃんをトイレに連れて行った後に再び寝室へ向かった。
一方、その場に残された私は悔しさに溺れてテーブルにうつ伏せになりながら、足をバタバタと上下させて浮かれた自分を反省した。
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