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第四章
33.自分に似てる彼女
しおりを挟むーー17時13分。
私は日向の家で、洗面所やキッチンの洗濯物を回収中にソファで寝転んでいるミカちゃんに目を向けた。
彼女は相変わらずソファから動かないし、挨拶すらしてくれない。
現状を見る限り、悩みを聞けるレベルまで到達できるか不明だ。
私自身もコミュニケーションを図るのが下手だから余計に。
もしかしたら、人に慣れるまで時間がかかる子なのかな。
でも、似てる……。
髪を切る以前の自分に。
何か悩みがあるなら聞いてあげたいけど、それが出来ない自分にもどかしさを感じていた。
ーー20時9分。
日向が帰宅。
ミカちゃんは玄関扉の開閉音に気づくと、暗闇の部屋の布団で寝かしつけに入っていた私の横から飛び起きてダダダと走って玄関に向かった。
布団の中に取り残された私は、寝かしつけまでの段階がリセットされたように思えてため息が漏れる。
はぁ…………。
ミカちゃんは本当にお兄ちゃんっ子だなぁ。
ーーそれから20分後。
彼はミカちゃんを寝かしつけた後にダイニングイスに腰を下ろしたので、私は作っておいた料理をテーブルに運ぶ。
元々料理は得意な方じゃないから、冷蔵庫の中身を確認してからネット検索して作れそうなものを作ってみた。
しかし、彼はそんな想いなど知らずに成長の芽を摘んでいく。
「何コレ。もしかして肉じゃが? イモが崩れてるんだけど……」
「ミカちゃんをお風呂に入れてる間に火を止め忘れちゃった」
「もしかして、明日は帰宅したら家ごとなくなってるんじゃ……」
「明日からは気をつけるから!! それより早く食べてよ。お腹空いてるでしょ」
黙っていれば超絶イケメンなのに、余計な口が昼間のポスターのイメージを崩していく。
はぁ……。
でも、ポスターを見て刺激されちゃったのかな。
近くで見ていたら本当に王子様みたい。
金髪の髪に透き通った肌。
ビー玉が入ってるような美しい瞳に、スッと鼻筋が通った高い鼻に、形の整った唇。
触れていないのにオーラが漂ってくるし、なぜか妙な緊張感が漂ってくる。
結菜がダイニングテーブルに肘をついて日向をぼーっと眺めていると、日向はそれに気づいてしらけた目を向けた。
「……なに見てんの?」
「ひ、ひぇっ!! ……ぜ、全然見てないしっ! 勘違いじゃないの?」
焦るばかりに両手を前に突き出してNOと訴えるように手を振った。
やばい。
見てた事がバレちゃったよ。
興味があると思われたら嫌なのに。
でも、口を開くとやっぱり可愛くないね。
「ね、ねぇ……。一つ質問があるんだけどさ」
「んー、何?」
彼は箸を持ったまま咀嚼して再び目線を上げる。
黒髪日向に話しかけてるつもりが、金髪姿で見つめられるとなぜか壁を感じてしまう。
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