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第四章
32.油断大敵
しおりを挟む「でもさ、悟って1年前くらいに足を骨折してからメディアへの露出が減ったよね。それまでは映画やドラマやCMとテレビに引っ張りだこだったのに」
「……確かに。最近あまりテレビで観なくなったかも」
言われてみればそうかもしれない。
高杉悟といえば、テレビドラマに加えてCMや映画や雑誌やポスターで見ない日はないほど売れっ子だった。
しかし、ちょうど1年前。
時代劇に出演した際に屋根から飛び降りるシーンで着地に失敗してしまい、足首を骨折したというニュースがメディアを着飾っていた。
「もしかしたら、ケガは芸能人生にとって致命傷なのかな」
「そんな事ないと思うけどなぁ。ドラマや舞台に出演する事は難しそうだけど」
「あっ、ドラマで思い出した! いま悟が出演してるドラマの『宇都木くんと名倉くんが私を困らせてくるっ!』は観てるよ。私は雷人の大大大ファンだからさ」
「へぇ~。だからみちるの王子様の名前はライトなんだぁ」
「そういう結菜だってハルトって名前にしたでしょ?」
「あ……、うん(残念ながらもうヒナタだよ)」
ーーそれから3分後にワクドナルドへ到着。
若者を中心とした客層が賑わいを見せている二階の4人席に腰を落ち着かせてコーラが入ったカップに手をつけた。
一旦話に区切りがついたところで、本題を切り出す事に。
「実は最近家政婦と子守りのアルバイトを始めてね」
「高校生で家政婦バイト? 珍しい~。ねねっ! それってお金持ちの家だよね」
「あ……あっ、うん。まぁね。(日向の家なんて言える訳がない)……それはいいんだけど、子守をしている4歳の女の子の部屋に入ったら絵が置いてあったから見たんだけど、人の顔に黒いクレヨンでワーッと塗りつぶしてあったの。肌の色を塗った訳じゃなさそうだったし、どうしてそんな事をするのかが気になって……」
「へぇ~。黒いクレヨンで顔を塗りつぶす……か。ねぇ、もしかしたら、何か悩みでも抱えてるんじゃない?」
「悩み……? まだ4歳だよ」
「悩みに年齢なんて関係ないよ。小さい子って知恵がついてくると自分の悩みを隠すからさ。そういう小さなサインを早く見つけるのって結構大事みたいよ」
「悩みを隠す……か。なるほどね。確かに彼女は人に相談するタイプじゃなさそうだし」
家に行ってもテレビから離れないし、日向が帰宅したら構って欲しそうにベッタリしてる。
でも、ひょっとしたら日向に悩みを明かしてるのかな。
彼自身も一度くらいはあの絵を見てるはずだし。
今日家に行ったらそれとなく聞いてみようかな。
「絶対何かに悩んでるはずだよ。早目に手を打っておかないと厄介な問題を起こすかもしれないよ」
「えっ、厄介な問題?」
「私、4人きょうだいの長女で一番下の弟がまだ5歳なの。おとなしい性格なんだけど、初めて1人でお留守番させていたら家中水浸しになってた。きっと、寂しさを何かで紛らわせたかったんだろうね」
「ひえぇぇえ~!! それは大変!」
「おとなしいから大丈夫だろうと思って油断してたせいか、セーブするものがなくなった途端に爆発しちゃったのかも。小さな子でも油断大敵だよ」
「……う、うん。わかった」
油断大敵……か。
確かに両親と暮らしてないし、普段は人に預ける機会が多いから悩みの一つくらい持ってると思うし。
でも、今は挨拶さえしてくれないのに悩みを明かしてくれるかな?
まだ先の事はよくわからないけど、もっと近づく努力をしてみようかな。
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