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第六章
50.ミカの悩み
しおりを挟むーー場所は、ミカが通う幼稚園のうさぎ組の教室内。
園児たちは帰り支度が済んで着席したまま黒板前で語っている先生に目を向けていた。
「さぁ、みんなー。先生のお話をよく聞いてね。再来週の土曜日は父兄参観があります。おたより帳に家族へのお手紙を挟んでおいたので、おうちに帰ったらお父さんとお母さんにお話をして下さい。いいですか~?」
「は~い!」
元気いっぱいの黄色い声が扉を通り抜けていく。
しかし、その中で1人暗い顔を落とすミカは辺りの賑やかな声に埋もれていくばかり。
すると、隣の席のユカリが横を向いて声をかけた。
「ねぇねぇ、ミカちゃん」
「なぁに?」
「父兄参観はパパとママの両方が来てくれるの?」
「……わかんない」
「ユカリのパパとママ絶対に来てくれるよ。ママが幼稚園のスケジュールを見て行くって言ってたもん」
「そうなんだ」
「ミカちゃんちのパパとママも来てくれるといいね」
ミカは斜めがけにしている黄色いカバンの紐をギュッと握りしめると、返事もせずに暗い顔で俯いた。
延長保育の時間になってミカは別室に移動するが、他の園児に混じっておもちゃで遊ぶ様子もなく、部屋の隅でクマのぬいぐるみを抱きしめたまま体育座りしていた。
延長保育の教諭は暗い顔をしてるミカに「どうしたの? みんなと一緒に遊ぼう」と声をかけるが、ミカは無言で首を振る。
ミカは遊びたい気分がかき消されるほど切実な悩みに直面していた。
ーー16時を少し過ぎた頃。
日向の事務所のスタッフの林が迎えに来る。
軽自動車にミカを乗せて家路向かうが、車内ガラスに映る表情はいつも以上に冴えない。
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