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第六章
49.境界線
しおりを挟むすると、彼は私の手首をがっしりと強い力で掴んで部屋の外へ追い出した。
「痛っ……」
「ここ、俺とお前の境界線」
「えっ……」
「家政婦ならもっと節度を弁えて。……もう二度と部屋に入るなよ。どんな理由があっても次はないから」
冷たく吐き捨てられながら閉ざされていく扉。
私は扉の奥に消えていく彼に向けて焦って言った。
「日向。ごっ、ごめん……」
パタン……
謝罪の言葉は閉まる音にかき消されていった。
最後に見た瞳は今にも泣きそうで私の胸を締めつけてきた。
その表情が脳裏に焼きつくと、後悔という二文字では処理しきれなくなった。
ーー帰りの電車内。
車内灯に照らされる中、まばらに吊り革に捕まっている社会人や学生に挟まれながらスマホをスカートから取り出してリア王を起動させた。
以前は電車に乗った直後にアプリを起動させるほどリア王に夢中になっていたのに、今は集中できない。
少しは気が紛れると思って開いたのに……。
『日向を怒らせちゃったかな。部屋に入るなと忠告されていたのに、約束を破ったから怒って当然だよね。でも、どうして両親と別居してるんだろう。ミカちゃんはまだ幼いのに……』
相談相手がお門違いなのはわかってるけど、残念ながら今はゲームのヒナタしか本音を語れない。
すると、ヒナタは言った。
『日向が言いたくないのにはちゃんとした理由があるから切り出すのを待ってみれば?』
「えっ!」
AIチャットから予想外の回答を受け取ると、画面を見つめたまま大きな声を出してしまった。
ハッと現実に戻り、指先で口を塞いでキョロキョロと見回すと、チラホラと目線を集めている事に気づいて照れ隠しで下を向く。
やだ、私ったら……。
電車に乗ってる事をすっかり忘れてた。
でも、確かにヒナタの言う通り。
言いたくないならこっちも無理に聞かない方がいいよね。
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