54 / 115
第六章
53.気になる陽翔
しおりを挟むーー終礼後。
日向はリュックを背負って人を避けながら教室から廊下に出ると、教室から飛び出てきた陽翔が前へ周って道を立ち塞いだ。
「阿久津。少し話がしたいんだけどいいかな」
「……なに? 急いでるんだけど」
「さっき屋上で早川と2人きりで喋ってなかった?」
「それが何か?」
「いやっ、その……、じゃれあってるように見えたから2人は仲がいいのかなと思って……」
陽翔はそれとなく気持ちを詮索するが、気まずさのあまり目線を下ろした。
一方、そのタイミングでみちると一緒に教室から出てきた結菜は、日向たちの異変に気付くとみちるにバイバイをしてからカバンを持ち直して聞き耳を立てながらそっと近付く。
「だったら、何?」
「えっ……」
「お前さ、先日まで早川の事をオール無視だったのに、髪を切った途端態度を急変させるのっておかしくない?」
厚い前髪と鼻まで覆っている間のメガネの奥から向けられている眼差しは、陽翔の心を冷たく突き刺す。
状況が悪化の一途をたどると、結菜はジワリと冷や汗が滲み出た。
あいつ……。
二階堂くんに向かって何を言ってるの。
そう言えば、あいつは差出人が私の名前のラブレターの件を知らないんだった。
「いや、そーゆーつもりじゃ……」
「日向っ! そんな言い方、二階堂くんに失礼じゃない」
2人の間に割って入ったまでは良かったけど、すぐに後悔した。
普段から日向と呼び慣れてしまっているせいか、思わず呼び捨てに。
やっばぁぁ!!
私ったら二階堂くんの前でなんて事を……。
親しい仲だと勘違いされちゃう。
結菜は焦って両手で口を塞ぐと、日向は鼻で笑って結菜に指をさす。
「こいつの趣味オタゲーなの知ってる? 中高生で流行ってる王子様の恋愛ゲーム。めっちゃどハマりしてるの」
「ちょっとぉ! いきなり余計な情報吹き込まないでよ。いま私の趣味なんて関係ないでしょ。……二階堂くん、ごめんね。あっち行こ」
「……あ、あぁ」
私はこれ以上の衝突と悪化を避ける為に、二階堂くんの腕を引いて日向と逆方向へ向かった。
あいつったら、マジで最悪。
二階堂くんに突っかかるどころか私の秘密まで暴露する必要がある?
これがあいつなりのエンジョイなの?
だとしたら、完全に方向間違ってるんだけど……。
若しくは、二階堂くんとの仲を引き裂くつもりなのかな。
結菜が不機嫌な足どりのままズカズカと歩いていると、陽翔はより一層不安な表情が隠せなくなった。
「早川。もしかして阿久津と仲良いの?」
「いいや!! そんな事ないっ!! 全っっ然仲悪い!」
「そう? でも、さっきは阿久津の事を『日向』と呼び捨てにしてたし、阿久津は早川の趣味も知ってたから」
ううっ……。
二階堂くんの口から聞かれたくない質問が飛び出してくる。
でも、墓穴を掘ったのは紛れもなく自分。
本音はあいつに丸投げしたいところだけど、あいつに任せたら更に酷い事になりそうなので、食い止めるのは自分しかいないと思った。
「日向とは……、ええっとぉ……、おっ、幼馴染なの!」
「えっ! 阿久津と幼馴染?」
「うっ、うん……。だから、しつこくかまってきてさ……。人の趣味までバラすなんて最悪だよね」
「へぇ、そうなんだ。初耳」
私も自分で言っておいて初耳だよ。
でもね、これしか逃げる方法が見つからなかったんだよ。
二階堂くん、嘘をついてごめんね。
本当は仕事で毎日会って身の回りの世話をしてるだなんて知られたらショックだよね。
あいつは最悪だけど、二階堂くんに嘘をついてる私も最悪だよね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる