68 / 115
第七章
67.本当の地獄
しおりを挟む「うっわぁぁあ、マジかっ! 俺がお前に愛の告白? ぎゃははは!! オタゲーばっかやってるから夢見すぎちゃったんだろ」
「なによ、それっ!! ……真剣な目で言ってたから本音を言ってるかと思って、どう答えようか真面目に考えてたのに」
「んな訳ねぇだろ。これがプロの俳優の仕事。逆にあっさり騙されてくれてごちそーさん」
「何よ、ムカつく! もう帰るっ!」
結菜は装着していたエプロンをむしり取ってカバンにぎゅうぎゅうと押し込んで帰り支度を始めた。
だが、日向はニヤニヤしたまま食事を続ける。
「あれぇ? 自分の気持ちをしっかり言えるようになってる。それもぜ~んぶ俺様のお陰だね」
「そんなの知らないわよ!!」
「この時間まで付き合わせちゃったから残業代出しとくよ」
「当たり前でしょ!! じゃあねっ!!」
カバンを鷲掴みにすると、ドカドカと足音を立ってながら扉を押し開けて家を出て行った。
あいつに気持ちが逆撫でされたお陰で、今にも頭から蒸気が上がりそう。
ーー帰りの電車内。
すっかり不機嫌になり、イラついた手つきで日向のインスタを開いた。
ストーリーには、本日のドラマ放送分のキャストの雷人くんと一緒に撮った写真が上がっている。
そこにはドラマの制服姿の彼と雷人くんが肩を組んで笑顔でピースしていた。
あいつめ~~っ!!
信者はこの笑顔にあっさり騙されているけど、あいつの心ん中は真っ黒黒なんだからねっ。
自分が褒めてもらえないからって、人の気持ちを弄ぶなんて最低。
しかも、先取りサービスって何?
頼んでもない。
一瞬本気に捉えちゃった自分がバカみたいじゃない。
あいつが私に好意を寄せてるって勘違いしちゃったじゃないの。
『バカバカバカバカーー! 黒王子のバカー!! 少し顔がいいからってカッコつけてんじゃないわよ。そうやって天使のように微笑んでも、あんたのドス黒い腹の内を信者が知ったら1人残らず消えていくんだからね!』
気づいた時には怒り任せにコメント欄を連打していた。
もちろん送信するつもりはないから鬱憤を晴らす程度だ。
こうやってコメント欄に地味に気持ちを書き出すくらいなら本人にもっと文句を言ってやればよかった。
しかし、コメントを書き終えてから以前の悪夢が脳裏をよぎった。
そうだ……。
前回、あいつへの悪口をコメント欄に書いたら、電車が揺れて手元が誤って送信してしまってコメント欄が炎上したよね。
あの時はあいつのファンに荒らし扱いされて、びっくりしてスマホの電源を落とさずを得ない状態に追い込まれてしまった。
前回の二の舞を踏みたくないから、隣駅に到着した際に消そうと思って画面をそのままの状態にしていた。
次の駅に停車して足元が落ち着いたので、コメント欄に再び指先を向ける。
ところが、指先が残り1センチと近づいた時、窓際に立っている私の隣にいる学生らしき男性が突然リュックを下ろして私の手元にぶつかった。
男性はぶつかった事に気づくと振り返って軽く頭を下げた。
「あっ、ごめんなさい」
「いえいえ、大丈夫です」
手振りを加えて善人顔でそう言ったのも束の間。
ピコ~ン……。
スマホから聞き覚えのある通知音が鳴った。
目線を再び画面に落とした瞬間から、あの日と同様通知ラッシュが始まった。
『私たちの王子様に向かってバカって酷過ぎる! 意味わかんない』
『またユイが荒らしに来たの? 一体何様のつもり?』
『ドス黒い腹の内って自分の事でしょ?』
『こいつ、黒玉子って言ってた変人だよね? 悟王子、注意して~』
私はリュックの彼にぶつかった際に送信ボタンを押してしまったのか、怒涛の非難ラッシュコメントが再び始まりを迎えた。
げげげっ!!
またやっちゃったよ……。
前回コメントを誤送信しちゃった時は散々な目にあったから、今回はちゃんと消そうと思ってたのに。
私は反省と同時にスマホの電源を落としたのは言うまでもない。
一方、日向は結菜が扉を出て行った後、ドラマのセリフを言った際の結菜の表情を思い浮かべると、カアァと顔を赤面させたまま口元を抑えた。
さっきはミカがちょうどいいタイミングで起きてきたから助かったけど、……俺ヤバいかも。
あいつにちょっと冗談を言っただけなのに、どうして女の子の目で見てんの。
ってか、あの瞳に勝てるヤツいるのかよ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】
remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。
佐倉ここ。
玩具メーカーで働く24歳のOL。
鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。
完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。
【完結】ありがとうございました‼
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる