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第四章
18.心の支配者
しおりを挟む校内で絶大な人気を誇るイケメントリオの蓮に彼女が出来たという噂は、あっと言う間に各学年の生徒達に広まった。
しかも、相手は私。
美人でもなく、特別に可愛い訳でもない。
頭がいいわけでもないし、才能に溢れてる訳でもない。
ごくごく一般的なJK。
変わってると言われれば、確かに右に出る者はいない。
当然、全学年の女子に妬まれた。
蓮のファンと思われる女子からの冷たい視線だけならまだしも……。
靴を隠されたり、体操着を切り刻まれていたり、教科書が破られていたり、私の机だけが教室の外に追い出されていたり。
蓮と交際を始めてから陰湿なイジメのターゲットになってしまった。
だけど、苦しみから救ってくれたのも蓮。
嫌がらせを受ける度に、間に立って問題を一つ一つ解決してくれる。
勇敢に守ってくれる背中が逞しかったから、もしかしたらこうなる事を見越していたのかもしれない。
辛い試練と戦い続けて暗い顔をしていると、蓮は優しく抱きしめてくれた。
温もりが伝わる度に涙が溢れて止まらなかった。
蓮は私の全てだった。
初めて唇を奪われた瞬間から、彼は王様。
私の心を支配した。
蓮一色に染まりきるほど惚れ込んでしまったせいか、私の中のNoは存在しない。
左親指の腹が私の右頰に触れると、それがキスの合図。
蓮はキスをする時、毎回そうだった。
本気で好きだった。
だから、浮気がどうしても許せなかった。
浮気を繰り返していた頃を思い出すと、やっぱり許せないけど……。
最近蓮が身近にいる生活を送っているうちに、心の隔たりはすっかり落ち着きを取り戻していた。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
「蓮、ジャージありがとう。洗って返した方がいいかな」
「いいよ、全然汚れてないし。……それより、何かあったの?」
折り畳まれたジャージを受け取った彼は、何か物言いたげな目で私を見つめている。
イジメに遭っていた当時を思い出したのだろうか。
蓮は別れた今でも気にしてくれる。
そして、困った時はさり気なく力になってくれている。
それだけでも充分嬉しい。
「ううん、何にもないよ」
「……ならいいけど」
そう言って席に戻って行く後ろ姿すら心配している。
すると、紬は背後から言った。
「また、蓮くんと付き合えばいいのに」
「それは、ないよ」
一部始終を見ていた紬も、先生との交際を知らないだけに心底復縁を願っている。
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