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第五章
22.残された時間
しおりを挟む「最近らしくないよ。このままじゃマジで高梨に持ってかれるよ」
「ってか、もう持ってかれてるし。昨日二人が付き合ってるって知っただろ」
「持ってかれるとはそーゆー意味じゃない」
「じゃあ、どーゆー意味?」
「高梨はもう27歳。結婚適齢期だから卒業を機に梓と結婚でも考えてるんじゃない?」
「え、結婚って……、あの結婚?」
「そ! 早くしないと、大切な梓は永遠に戻って来なくなっちゃうよ」
高梨は大人の男。
経済力がある。
生活力がある。
包容力がある。
そして、いま梓と付き合っている。
それに対して……、
俺はガキ。
親に養ってもらっている。
将来がまだ見えてない。
もうフラれている。
何度追い回しても振り返ってくれない。
計りにかける以前に今の時点でもう劣勢だし。
「もう気付いた? 卒業まであとどれくらい残ってる?」
「……3、4。やべっ、もう5ヶ月もない!」
「その通り。じゃあ、これから天下の蓮様はどうするつもりなの?」
卒業まで残された時間は残り僅か。
俺がこうしてる間にも、高梨は結婚に向けて着々と準備を進めてるかもしれない。
チャペルで純白のウエディングドレスを着ている梓の隣にいるのは、俺じゃなくて高梨。
「無理……」
神父の前で二人の永遠を誓う愛の言葉。
「無理無理……」
高梨の手によって梓の薬指にはめられていく結婚指輪。
「無理無理無理無理……」
高梨が両手で肩を抱いてゆっくりと重ね合わせられた誓いのキス。
「っだああぁぁあっ!!」
「……。(なんだろ。何故かこいつの頭ん中が丸見えだ)」
蓮はむしゃくしゃするあまり両手で頭を抱えて発狂した。
……俺、こんなところでのんびり遊んでる暇じゃない!
こうしてる間にも二人の愛が育まれている可能性が。
一刻でも早く手を打たなければ、あいつは二度と俺の元へ戻って来ない。
手遅れになる前に返してもらわないと。
蓮は結婚というキーワードに引っ掛かると、ほろ酔い気分が一気に覚めた。
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