Re.start ~学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます~

伊咲 汐恩

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第五章

21.ヘタレン

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  日中との寒暖差が開き、季節がガラリと衣替えしたかのように肌寒くなった、とある日の夜。

  イケメントリオの三人は、行きつけの小さなクラブに遊びに来ていた。
  大和は二人が見知らぬ女といちゃつき、奏はカウンターでうずくまりながら静かにお酒を飲んでいる蓮の隣の席に腰掛けた。



「おい、ヘタレ蓮」

「……誰がヘタレだ」


「いや、ヘタレ蓮じゃなくてヘタレンだな」

「ウゼー……。何だよ、ヘタレンって」


「お前、どうしてクラブに来る前に塾行ってんの?  梓はお前が猛勉強してるのを知ってんの?」

「いや、知らない」


「遊びに勉強と両立してたら、いい加減身体を壊すって」

「お前には関係ないから」



  俺は手元の焼酎をグイッと飲み干して質問攻めの奏に無愛想に答えた。
  店内はユーロビートやテクノ系の曲がガンガンかかっていて、顔を接近させないと声が聞こえない。
  でも聞きたくない質問だったから、店内はうるさい方が良い。


  昼間は一日中梓について回り、夕方からは塾があって、体力的に消耗した夜は遊びといえども結構シンドイ。



「飲みすぎるとまた悪酔いして記憶がぶっ飛んで、朝起きたら知らない女とホテルで寝てるかもな」

「またその話?  ただですら梓に浮気したと責められてトラウマになってるのに……」



  ーーあれは、梓と交際していた頃。
  梓のある事で思い悩んでいた俺は、クラブで悪酔いしてハメを外した。
  浮気をしたつもりはなかったけど、悪酔いすると記憶を無くすクセがある。

  目が覚めると、知らない女とホテルのベッドの上。
  これが三回。
  正直、自分でも呆れた。

  隠したら罪が重くなると思って正直に白状した。
  勿論あいつはめちゃくちゃキレてたけど、二回までは許してくれた。
  でも、さすがに三回目となると許せなかったようで……。



『信じられない。どうしてまた浮気したの?  二回も許したのに三回目なんて……、バカなんじゃないの。もう無理。許せない』



  またいつものように許してくれるだろうと甘い考えを持っていた俺に下された三回目の決断は別れだった。
  こうして俺は身に覚えのない浮気が原因でフラれてしまった。



  蓮がボーッとしながら過去を振り返っていると、奏は何かを思い描いたかのようにフッと笑った。



「そんなに梓、梓ってさ。梓のどこが魅力なの?  かわいい?  それとも美人?」

「あ、いや。……そうじゃなくて」


「あー、やっぱり!  お前もブスだと思っていたんだな~」

「一発食らわそうか……。マジで!」



  面白半分に冗談をかます奏にムカついて拳を震わせた。

  確かに梓は俺に不満があったけど、実は俺にも不満があった。
  それは未だに封印したまま。

  奏は注文していたビールをカウンターで受け取ってグイッと一口飲むと、精神的に追い詰められている気持ちを更に煽った。

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