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第四章
20.イジワルトリオ
しおりを挟むどうしよう……。
このままだと高梨先生との関係を知られるのは時間の問題に。
万が一、教師の耳に届いてしまったら、先生はクビになっちゃう。
私も退学になっちゃうかも。
気が動転しそうなほど焦り狂ってジャンプを繰り返しながらうまく誤魔化す方法を考えていた。
すると……。
「何それ?」
突然何処からか現れた蓮は、奏が高々と持つ付箋が気になって背後からヒョイと取り上げた。
付箋を両手で開くとなぞるように目を通す。
「あっ……」
「なーんだ。高梨からのメモじゃん。要らねー」
蓮は口を尖らせてそう言うと、付箋をグシャッと握り潰して後方の床へポイッと投げ捨てた。
焦った梓はビーチフラッグをしているかのように丸く潰された付箋を床から拾い上げると、すかさずポケットにしまった。
奏の頭の中のパズルは、差出人不明から高梨の名へと当てはめる。
「マジ? お前、高梨と付き合ってんの? やるなぁ~」
「蓮っっ! あんたっ!」
「~♪」
蓮は何食わぬ顔で口笛を吹く。
もう、この時点で悪意しか感じられない。
「お前さぁ、趣味悪ィ~な。あ、そうだ! 早速大和に報告しよう」
「奏っっ!」
上機嫌な奏は、軽やかなステップを踏みながらその場から離れていった。
蓮のヤキモチ加減にも限界がある。
奏に先生との秘密をバラすなんて……。
梓は奏を捕まえようとして走り出したが、蓮はすかさず肩を引き止めた。
梓はカッとするあまり、蓮の方へと振り返って鬼の形相を向ける。
「どうして私を引き止めるのよ。引き止める相手が違うでしょ! 私達の関係がバレたら最悪な結末しか待ってない」
「まぁまぁ、あいつはあぁ見えても案外口が固いから信じてやれって」
「でもっ!」
「大丈夫。悪いヤツじゃない事くらいお前も知ってるだろ」
……そうだよね。
私達は2年の付き合いで信用があるし、先生との交際を軽々と話す訳ないか。
もし、教師と生徒が交際してるって噂が流れたら、学校中の問題になっちゃうしね。
蓮の言う通り、友達として信じてあげないとね。
この時は、蓮の言葉を信じて奏の後を追いかけるのをやめた。
ーーところが、翌日。
「お前さぁ、高梨と付き合ってんだって? 昨日、奏から聞いてビックリしたよ。俺、聞いた瞬間ツボって笑いが止まらなかったわぁ」
「……」
大和は私バカにしながら、目の前で腹を抱えながら笑い転げている。
奏……。
あんたがあの時付箋を拾い上げなければ。
いや、空気を読んで黙っててくれれば、大和は事実を知らずに済んだんだよ。
蓮……。
あんた、昨日奏は口が固いから大丈夫って言ってたよね。
あんなに自信満々で言うから、あんたの言葉を信じて止めなかったんだよ。
だけど、あっさりバレてるってどーゆー事?
蓮、奏、大和。
この三人組が、先生との交際を知っているイケメントリオ。
いや……。
私からするとイケメントリオじゃなくてイジワルトリオ。
あらやだ、自分でも驚く程ピッタリなネーミング。
この三人組に秘密を握られているけど、いつ他の生徒達にバラされるかは時間の問題に。
イケメントリオは誰一人として信用出来ない事がいま判明したから。
でも、昨日の電話先の先生の声、なんか元気なかったなぁ。
午後からの出張で疲れてただけ?
それとも、何か嫌な事があった?
先生は大人だから中々悩み事を相談してくれない。
先生に私達の交際がイジワルトリオにバレてしまったなんて死んでも言えない。
元々は不注意でメモを落としてしまった自分の責任なんだけどさ……。
そろそろ連絡方法を見直さないといけないかもしれない。
でも、突然連絡方法変更の提案したら、逆に怪しまれちゃうかな。
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