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第十二章
85.大和の恋愛観
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「紬、日誌だけ先生に渡してくるから教室で待ってて。すぐに戻るから」
「ん、行ってらっしゃい」
ーーある日の放課後。
日直の私は、一日の出来事を学級日誌に書き終えてから職員室に向かった。
職員室の扉を出ると、同じく学級日誌を持った別棟のクラスの大和にバッタリ遭遇する。
「大和も今日日直だったの?」
「大和も? 確かに俺は日直だけど、お前は問題を起こして職員室に呼び出されたんだろ?」
「あー、はいはい。そうですよ~。私はいつも悪者ですよ」
「相変わらず冗談が通じねぇな……。いま日誌を出してくるからちょっと待ってて。蓮に用事があるからそっちのクラスに一緒に行こ」
大和が職員室から出て来てから一緒に廊下を歩いた。
放課後という事もあって廊下は人通りが少ない。
普段二人きりで話す機会のない大和に気になっている質問をした。
「ねぇ、大和はどうして彼女を作らないの?」
「急にその質問?」
「だって、付き合っても数日で別れちゃうんだもん。1週間続いた事ないでしょ」
「恋人いたら色々面倒くさいじゃん、お前達みたいに」
「うっ……」
「俺が女を作らない理由は、ヤキモチは妬かれたくないし、会う為にお互いの予定を合わせなきゃいけないのがだるい」
「でも、大和を一途に想ってくれる人もいると思うし、長く付き合ってみれば案外楽しい事があるかもしれないよ?」
「無理無理。女は、男が他の女と遊ぶだけでギャーギャー騒ぐだろ。俺は色んな女と遊びたいのに騒がれるのは勘弁」
大和を純粋に想い続けている紬には大変申し訳ないけど、お互い求めているものが違い過ぎる。
でも、大和はまだ本物の恋がまだ見つかってないのかなぁ。
交際が面倒な大和の話と、大和を一途に想う紬の気持ちを重ね合わせているうちに、自分の感情が先行してしまった。
「じゃあ、生涯ひとりぼっちでいるの? 長く交際しないと見えてこないものだってあるんだよ。例え大和に片想いしてる子がいたとしても、面倒な事を理由に目を逸らし続けるって意味なの? それ、酷くない?」
「生涯って大袈裟だろ。何? 自分に恋人がいるからって彼女がいない俺に説教でもしてんの? 俺が間違ってて、お前が正解とでも言いたい訳?」
教室まであと一歩という階段の踊り場で、紬との未来が見えない大和の恋愛観についてつい口を出してしまった。
言い争うつもりはないけど、弄ばれる女子の気持ちも少しは考えて欲しかった。
「だって、奏も同じだけど、二人とも女にだらしないんだもん。本気で好意を寄せてくれている女子がかわいそうだよ」
「はぁ? お前は人にあれこれ指図してるけど、自分はどうなんだよ」
「なにがよ」
「秘密の交際中の高梨とはどうしていくつもり? お前を嫌がらせからかばう為に偽恋人として付き合っている蓮を散々利用してんのにさ。お前は二股かけてる奏とあまり変わんねーのに、偉そうな口を叩ける立場かよ」
「大和も知ってるでしょ? 私は二股じゃない! 本命は先生だけ。それに、偽恋人は蓮と同意の上だった」
大和とは価値観が違うせいか、我を忘れてついムキになってしまった。
まるで小学生のように二人でギャーギャー言い争っていると……。
「……その話、本当なの?」
背後からポツリと呟く声が。
それに気付いた瞬間、私と大和はハッとして口を止めた。
我に返るとサーッと血の気が引いていく。
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