Re.start ~学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます~

伊咲 汐恩

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第十三章

93.梓の想い

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  恋の病って……。
  人がブチ切れてる時によくそんな事が言えたね。
  ひょっとして、怒りを鎮める為に笑わせようとしてるの?
  正直、笑えないんだけど。

  でも、もし蓮の言う通り恋の病にかかってるとしたら、その病は相当進行してるね。



「……は?  恋の病なんてバカじゃないの?」

「思い返してみろ。俺は病気になったなんてお前にひと言も言ってない」


「じゃあ、私が勘違いしてるって気付いた時に言ってくれれば良かったでしょ?」

「俺自身もみんなに病気扱いされていた事を知らなかったよ。裏で身に覚えのない噂が勝手に広がってるし、何故病気に繋がったのか……。そして、それがどうしてみんなに伝わってるのかさえ思い当たる節がないし」


「だったら最初に噂を知った時に教えてくれれば良かったでしょ?  蓮が病気で死んじゃうんじゃないかと思って、本気で心配してたんだよ!」



  全身の力を振り絞って感情をぶちまけた瞬間、蓮はハッとした目を向けた。



「お前……、本気で俺の事を心配してくれたの?」

「そうだよ!  ……毎日毎日考えてた。何をしてても、蓮の事を思い描いたら自分でも気持ちが抑えられなくなってた。病状が悪化したら、ある日突然倒れちゃったら、この世からいなくなると思ったら私っ……私………」



  限られた時間の中。
  言いたい事をギュッと凝縮して伝えたら、一気に悲しみが押し寄せてきた。
  もしかしたら、言葉の凝縮までもが気持ちを凝縮させていたのかもしれない。

  苦しみから解放されたら、涙がポロポロ溢れていた。


  泣くはずじゃなかった。
  弱気な自分を見せたくなかった。
  でも、蓮が病気じゃないと判ったらコントロールが利かなくなっていた。



  梓は泣いてる姿を隠す為に、右手の甲で軽く目をこする。



「泣くなよ」

「バカヤロぉぉ……。蓮なんて、もう嫌い!  大大大嫌い!  もう絶交だからね!  絶対絶対、許せないんだから……」


「ごめん、悪かった。俺はこれからもお前の傍で生きていくから」



  蓮は反省の色を醸し出しながら梓の髪をグシャグシャっとかき乱す。
  それにより、梓は水道の蛇口を最大限までひねったかのような涙がドッと溢れてきた。



  蓮が病気じゃなくて本当に本当に良かった。
  でも、思い込みじゃなくて蓮が本当に病気だったら私は……。



  梓が全ての想いを伝え終えた瞬間、校内に本鈴のチャイムが響き渡った。



  ーー蓮との話し合いは想像以上に時間がかかってしまい、本鈴が鳴り終えるまでに教室には戻れなかった。

  幸い5時間目の国語教師はまだ教室に到着していない。
  しかし、クラスのみんなは既に着席。
  遅れて教室に入った私達は、一斉にクラスメイトの目線を引いた。


  無表情の蓮に次いで、目を真っ赤にして教室へ入る私。
  紬は花音の傍で保健室に向かっていく様子を一部始終見ていたから、私の体調が想像以上に悪かったのではないか……と思ったのか、心配そうな目つきで見ている。

  その一方で、私達の事情など知るはずもないクラスの生徒達は、顔色一つで別れ話でもしたのではないかと勝手に噂話を始めた。

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