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第十三章
92.恋の病
しおりを挟む蓮に肩を抱えられて保健室方向に向かっているが、残りの時間を確認しようと思って手元の時計を見ると同時に予鈴が鳴った。
キーンコーンカーンコーン……
ヤバっ、昼休み終了まで残り5分しかないじゃん。
次の授業まで時間が差し迫って焦りを感じると、もう痛々しい演技なんてどうでもよくなった。
すくっと直立してから蓮の腕を引っ張って走り出し、ものすごい勢いで保健室の前を通過する。
「えっ、お前……腹大丈夫なの? 保健室通過してるけど」
蓮は突然人が変わったかのように走り出した私にポカンと口を開けた。
だが、そんな気持ちなど無視してあまり人影のない理科室前へと連れて行く。
「ハアッ……ハアッ……ハアッ……」
二人とも全速力で走ったから息が上がる。
昼休み終了まで残り5分を切ったので、長い前置きはやめて本題に入った。
刻一刻と迫る時間と湧き立つ怒りでイラついていたから、早口気味に本題へ入った。
「昼休み終了まで時間がないから手短に話すよ」
「お前、腹の調子は……」
「そんなのどうだっていい」
「腹が痛そうにしていたから心配したのに、どうだっていいってお前っ……、まさか仮病?」
「あぁ、もううるさい! 蓮はどうして私が病気だと勘違いしてたと気付いた時に、本当の事を教えくれなかったのよ」
言いたかった事を口に出した瞬間、今までの色んな想いが駆け巡った。
自分は蓮に何をしてあげれるか、
倒れたらどうしようとか、
蓮がこの世からいなくなったらとか。
いつも心配で気が気じゃなかった。
蓮の事を考えてる時間は、他の事を考えられない時間だった。
今は本物の彼女じゃないから出来る事は限られてしまうけど、それでも最大限に頑張ってきたつもり。
だが、蓮はムスリと不貞腐れた顔で言う。
「失礼な……。病気は嘘じゃない」
「まだそんな冗談を言ってるの? 大和から病気じゃないという事をこの耳で聞いたんだから」
「あいつがどう言ったか知らないけど、病気は本当だ。毎日悲しくて辛くて苦しんでる。それだけは嘘じゃない」
「じゃあ何の病気を患ってるか聞いてあげるから言ってみてよ」
この期に及んでも病気だと言い張る蓮。
嘘はとっくにバレているのに、この後はどう取り繕っていくつもりなのだろうか。
すると、蓮は突然ポッと頬を赤く染めた。
「俺が患っているのは……、恋の病だ」
蓮がそう言った瞬間……。
想像をはるかに超える馬鹿げた回答に頭がくらっとした。
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