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第十四章
96.消えた蓮
しおりを挟むーークリスマスを来週に控えた、12月中旬のある日の放課後。
蓮と一緒に帰る約束をしていた私と紬は、教室から姿を消した蓮の行方を追っていた。
「蓮くん、どこに行ったんだろうね」
「あんなに一緒に帰るってギャーギャー騒いでいたのに、自分が先にいなくなっちゃうなんて信じられない」
蓮のスマホは鞄の中に入っているようで、何度鳴らしても連絡がつかない。
仕方ないので紬と手分けをして校内を探す事に。
しかし、校内を隅々探しても蓮は一向に見当たらない。
鞄が置いてあるからまだ学校にいるのは確かなんだけど。
キョロキョロと見渡しながら二階の渡り廊下を歩いていた時、開いている窓からビュウっと冷たい風が身体に吹き付けた。
その瞬間、毎年恒例のあの事をふと思い出した。
彼には年に二度訪れる、特別な恒例行事がある。
それは告白ラッシュ。
一度目はクリスマス。
二度目はバレンタイン。
交際が長かった分、この時期に訪れる行事がよくわかっていた。
彼女がいてもいなくても関係なく、年に二度は執り行われる。
クリスマスを間近に控えたシングルの女子達の狙いは、クリスマスを彼氏と一緒に過ごす事。
時には仲の良い友達ですら恋のライバルに。
彼女達のターゲットは、自然とイケメントリオに集中する。
一方のイケメントリオは、度重なる告白で自由が利かない日々が続いている。
本校には死角がある。
どの教室から見下ろしても、木々に遮られていていて誰からも見えないほんの小さなスペースがある。
そこは、生徒達の告白場所として利用される事が多い。
ひょっとすると、そこに蓮がいるかもしれないと思って迷わずその場所を目指した。
すると、告白スペースをあとひと曲がりという所で女子の声が耳に入った。
足音を立てずにそろりそろりと近寄り、建物の角からひょこっと顔を出して覗いてみると、やっぱり読み通り蓮はそこにいた。
「柊先輩っ! 私、入学してからずっと柊先輩だけを見てきました!」
「えっ、君はストーカーなの?」
蓮がそう言った瞬間、浮ついていた彼女に一瞬不穏な空気が流れる。
「違いますっ! ストーカーじゃありません。あのぅ……私、気付いたら柊先輩ばかり目で追っていて……。何処に居てもすぐ見つけてしまうと言うか……。でも、たまに私と目が合ってますよね?」
「えっ、全く心当たりはないけど……。ってか、やっぱりストーカーでは……」
「だから、違いますよぉ。柊先輩が好きです。見てると胸がドキドキして、ずっと傍で見ていたいと言うか……」
「ははっ、そんなに俺ばかり見るなって。見過ぎたら穴が空いちゃうだろ」
蓮は相変わらずだった。
まるでコントのような会話に聞こえるが、実際そうではない。
告白され慣れているからこそ、相手の緊張を解す手法なのはわかっている。
あの子は蓮を先輩と言ってるから年下なのかな。
なんて思いながら、遠目から告白現場を見守った。
彼女は色白で下がり眉毛に前髪が厚めで茶髪の肩までのストレート。
国民的アイドルグループの一員に入ってそうな雰囲気の可愛らしい子。
自分が知る範囲では蓮の理想のタイプ。
子犬の泣き声のような甘え口調は、学校一の問題児である花音と然程変わらない。
過去の統計データによると、蓮に近付く女はみんなダメ女になってしまうらしい。
……ま、私は違うけどね。
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