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第十六章
115.届かぬ想い
しおりを挟むーー大学入試共通テストを終えた日の翌日。
クラスメイト達は一山越えて緊張感が解れたお陰か、安堵の表情で友人同士で試験の出来具合いを確認していた。
短大を希望している紬の試験はこれから。
今日も休み時間をフルに使って机で黙々と勉強している。
奏と大和は既に専門学校の入学が決まっている。
一方の蓮は、いつもと変わらない。
以前なら、テストの出来具合いなど確認し合っていたのに、今は近付く事すら難しい。
学習机に忍ばせたお守りに気付いてくれたかな。
効果があったかな。
私も同じお守りを試験会場に持って行ったし、全力で頑張ったよ。
それを伝えられないから心の中からテレパシーを送った。
以前なら話さなくても目配せだけで通じ合えたのにね。
高校生活はもう残り僅か。
それなのに、まともに話が出来ないからもどかしい。
ーー人混みでごった返している購買内で、梓は昼食用のパンを一人で選んでいると……。
「元気ィ?」
サンドウィッチを口にくわえてコーヒー牛乳とあんぱんとカレーパンを手にしている大和は、次々と押し寄せてくる生徒達でもみくちゃになりながら梓に声をかけた。
「あ、大和! 久しぶり。会うのはクリスマス以来だよね?」
「あー、そうかも。メシ代払うまでちょっと待っててー。途中まで一緒に戻ろ」
私達はそれぞれレジで会計を終えると、お互いの教室の別れ道まで一緒に戻る事にした。
大和とはたまにしか会わないから、お互いの近況をよく知らない。
大和は彼女がいないせいか、人の事をやけに知りたがる性分。
天然だから大和と喋っていると話がややこしくなる事があるので、たまに面倒くさい時もある。
秘密にしていた高梨先生との関係を紬に知られたのも、半分はこの男が原因。
余計な口が災いを齎している。
まさか、人の恋愛話をうまく引き出して、参考にしようとでも思っているのかな。
「最近、高梨とは上手くいってるの?」
「その話はやめて……。この前別れたばかりなんだから」
「えっ、あいつにフラれたの? マジで?」
先生と別れた事はあんまり人に話したくないけど、蓮の事もあるから話さなきゃいけない。
大和には今ちゃんと話しておかないと、後々面倒くさくなるし。
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