Re.start ～学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます～

第二十二章

158.砂の城

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「はぁっ……っ、はぁっ……」



  大量に滴る涙を手の甲でひとぬぐいした梓は、屋上前の踊り場にぺしゃんと座り込んだ。
  冷たい地面の感触が身体中に伝わる。



「私、………最低」



  蓮に怒鳴り散らした後、すぐに後悔の念に苛まれた。
  卒業間近に色んなストレスが交わり、窮地に追い込まれてしまっていた私はクリスマスの時と同様、再び判断を誤ってしまった。

  この3年間、花音との経緯を知らなかった彼に言う言葉ではなかった。
  他に言い方があったはず。
  だけど、いっぱいいっぱいだったせいか最善策が見つからなかった。


  本当の事を言えるわけないじゃん。
  蓮も受験シーズン中だから、迷惑かけたくないと思っているのに。
  花音に逆らえる人なんて、このクラスには誰一人いないんだよ。

  それに、私のライバルの数を知ってるの？
  他の人がリスクを負ってまで私を助けたりなんてしない。
  ライバルのみんなは私が蓮を諦める事を心から願っているから。


  でも、本当はケンカしてる場合じゃない。
  来週はもう卒業式。
  卒業したら離れ離れになってしまうから、卒業式前には復縁しようと思っていた。


  しかし、いつしか私達の関係は砂の城に。
  大きな波がやってきたら跡形もなく崩れ去ってしまう。

  不安定な気持ちに、不安定な関係。
  心の隙間を埋める時間が残されているのかさえ今の私にはわからない。



  ーーそして、翌日。
  希望している大学の二次試験が行われた。

  私は蓮の自宅の机の中に忍ばせたお揃いのお守りをポケットの中で握り締めて、これからテストが行われる大学の門をくぐり抜けた。