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第二十四章
174.卒業式
しおりを挟む卒業式会場の体育館にクラッシックのBGMが流れると、会場に現れた学級担任が一礼をしてから卒業生を引率する。
私達卒業生は保護者や来賓の拍手で迎えられた。
卒業生一同が着席すると、教頭先生はマイク越しに開会の言葉を始める。
静粛ムードの中、BGMの隙間から咳払いやパイプ椅子が軋む音などが時より聞こえる。
卒業証書を受け取る順番がいよいよ自分達のクラスの番に。
担任教師が私の名前を呼んで壇上に上がり、一礼してから卒業証書が授与された。
送辞や答辞が行われると、次に前日に沢山練習した式歌を歌った。
生徒一同が声を揃えて歌うこの式歌によって、もう二度とこの学校に通う事はないと改めて実感させられる。
途中から紛れてきた啜り泣き声につられて途中まで我慢していた涙が溢れ出てきた。
長いようで短かった3年間。
勉強。
盛り沢山な学校行事。
先生や友達。
毎日通った教室。
思い出の詰まった場所。
蓮との思い出。
色んな思い出が脳裏を駆け巡って涙を流しながら歌に想いを込めた。
閉式の言葉を終えて再びBGMが流れて来賓や卒業生の保護者が拍手で見送る中、私達卒業生はゆっくりとした足取りで会場を後にした。
教室に戻ってから最後のHRが始まると、声を震わせて泣く担任の言葉をもらい泣きしながら聞いた。
担任は1年間このクラスに愛情を持って接していたので、旅立っていく卒業生との別れを惜しんでいる。
HRが終わると、担任の誘導で中庭に移動して各自持参しているカメラやスマホで校舎をバックに集合写真を撮ってから自由解散した。
さっきまでクラス一同で写真撮影をしていた蓮だけど、あっと言う間に在校生に取り囲まれている。
制服のボタンを女子達に無理矢理引きちぎられて困っている姿は、何だか可笑しくて笑えた。
押し付けられるように受け取った数々の花束は、持ちきれないほどの数になっていて今にも左腕から落ちてしまいそう。
健在している人気っぷりを遠目から眺めているうちに、今でも遠い存在だと実感させられた。
その間、お世話になった先生方や、他のクラスの友達に挨拶したり写真を撮ったりしていたけど、目を離した隙に蓮は中庭から姿を消していた。
焦って右に左にと何度も辺りを見回しても、先程まで在校生に取り囲まれていたはずの彼の姿は見当たらない。
中庭に集結している人混みをかき分けて、目の色を変えながら蓮を探した。
左、正面、右、後ろ。
身体を時計方向に一回転させて、どの角度を隅々見ても彼の姿は視界に入って来ない。
不安に包まれる中、別のクラスの友達と別れを惜しんでいる紬を発見。
一旦落ちつかせるように軽く一息をついて紬に声をかけた。
「紬、蓮を見なかった? さっきまで在校生に囲まれていたんだけど、目を離した隙に見当たらなくなっちゃって」
「大丈夫。蓮くんは黙って消えたりしないよ」
気焦りして早口気味に話す梓に対して、紬は穏やかな口調で返答する。
「……あ、うん。そだね。今日は一度も蓮と話してないから気持ち的に焦ってて……」
「ほら、今日で卒業なんだからもっとしっかりしないと!」
紬は照れ笑いしている梓に優しく微笑むと、先程まで話していた友達の輪から外れて、「ねぇ、あっちで話そ」と梓の手を取って人が少ない場所へと連れ出した。
紬は大木の木陰の元に立ち止まって耳に髪をかけた。
瞼を軽く伏せている瞳の奥は何かを考えているかのように思えた。
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