LOVE HUNTER

伊咲 汐恩

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第六章

150.退屈な時間

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  今朝発表された天気予報は見事に外れた。

  午前中から空に覆いかぶさった厚い雲は、やがて地上に突き刺すような強い雨を放出していた。


  10月中旬というのに、まるで台風がやってきたかのような強い雨風が運ばれて予想以上の悪天候に見舞われた。

  窓辺に立つ拓真は、レースカーテンをめくって窓の向こうの空を見上げる。



「今日はもう作業が出来ないから、少し早いけど家に帰るか」

「……え?」



  拓真と過ごせる週に一度きりの貴重な日曜日なのに、まさかの帰宅指示が。

  夕方まで居座るつもりだったのに。
  まだ拓真と一緒に居たいよ。
  帰りたくないよ。

  心の叫びは届かないから、少しでも長居出来るように駄々をこねた。



「ダメダメダメ!  まだ、帰らない。もう、お尻に根っこが生えちゃったもんね~」

「……小学生のガキかよ」


「冗談だってば。もし帰るなら、せめて雨が少し弱くなってからじゃないと危ないよ」

「そうだな。今帰るには雨足が強くて足元が危険だし、電車が遅れてるかもしれない。……そうするか」



  和葉の小さな交渉は見事に成功。
  レースカーテンを閉めた拓真は、ちゃぶ台に移動して、和葉の隣の座布団にドカッと腰を下ろした。



  ホッ、よかった。
  追い出されずに済んだわ。
  週に一度きりの幸せな時間だから、1分1秒でも長く居座らないと。



  しかし、居間で何をする訳でもなく、ちゃぶ台を前にして二人でテレビを観ている。

  隣同士に座るお互いの手の指先は、あと5センチ近付いたら繋がるというのに、一向に触れる気配がないのはまだ恋人関係にないから。




  退屈……。
  拓真と二人きりで居られるのは嬉しいけど、テレビを観に来た訳じゃないのに。
  しかも、拓真の関心はテレビに寄せられている。

  野うさぎのように愛くるしい美女が隣で暇を持て余しているというのに、一切構わないなんて……。


  もしかして、私が超絶美人過ぎて手の届かない存在だから?
  若しくは、万が一手を出したら、急に何処からか現れた闇組織に拘束されて、痛い目に遭わされるとでも思ってるのかしら。



  和葉は退屈なあまりに、暴走した妄想劇が止まらない。



  きっと、こんな味気ない居間にいるから退屈なんだよね。
  もし、これが拓真の部屋だったら、もっと新しい発見や他に楽しい事があるかもしれない。


  あ、そうだ!
  中学の時の卒アルとか見たいな。
  ヤンキーだったから、卒アル写真も金髪なのかな。
  部屋に行ったら枕ちゃんにも会えるしね。

  あれこれ考えていたら、一刻でも早く拓真の部屋に行きたくなっちゃった。

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