LOVE HUNTER

伊咲 汐恩

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第六章

155.タクマガスキスキ

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「あのね、ハナちゃん。和葉はね、拓真が好き好き好きで仕方ないんだ。拓真って人はね、イケメンで、細マッチョで、背が高くて、年下でツンデレで超生意気だけど、和葉を真実の目で見ていてくれるんだ。いつも勇気を与えてくれる大切な人なの。……だから、拓真が好き好き。拓真が好き好きなんだよ」

「タクマ ガ スキスキ  タクマ ガ スキスキ」


「うわーっ!  本当に言葉を覚えるのが早い。凄いね、ハナちゃん!」



  こうやってハナちゃんに伝えるみたいに、友達に気軽に恋愛相談出来たらどんなにいいか。
  もし、素直な気持ちを伝える事が出来たら、胸のつかえがスッと消えるのかな。



「ねぇ、ハナちゃん。和葉がチューを教えてあげるから、ハナちゃんも同じようにほっぺにチューして。この儀式は大人への第一歩だよ。まぁ、ハナちゃんはこれがファーストキスになるだろうから和葉が最初に奪ってあげる」



  和葉はハナちゃんをカゴから出して手の上に乗せてハナちゃんの顔にチューをした。
  ところが、人間慣れしているハナちゃんは逃げる事のなく足を踏ん張らせた。

  だが、ハナちゃんはこのタイミングで覚えたての言葉を復唱する。



「タクマ ガ スキスキ  タクマ ガ スキスキ」

「ちょっとぉ。そんな言い方したら、まるで和葉が失恋したみたいじゃない。ねえ、和葉の事も好きになって。和葉が好き好き。和葉が好き好き。ほら、ハナちゃん。同じように言ってみて」

「……」


「何で言わないのよ。あ、そうだ!  餌で釣れば少しは言う事を聞くかな」

「……」


「でも、餌を与えすぎて太ったらオスにモテなくなるから、時間外のおやつはあげないよ。スリムな体型を維持するのはモテ女として基本なの。……そうだ、少し運動しなきゃね。部屋の中を飛んでごらん」

「……」


「もうっ!  ハナちゃんったら、和葉の話を無視して。和葉なんて太らないように学校までの片道2時間の電車の道のりは、なるべく座らないようにしてヒップアップのストレッチをしてるんだから。ハナちゃんも和葉を見習って頑張らないとね。ファイト!」



  残念な事に、この時点でペットとのコミュニケーションを図っているような状態ではない。
  会話と言うより和葉のひとり言にほぼ等しい。

  和葉がハナちゃんとの会話に夢中になっていると、扉の奥から父親の声がした。



「和葉ちゃん、お風呂が湧いたから先に入りなさい。雨で身体が濡れたままだと風邪を引いちゃうからね」

「はぁい、今行きまーす」



  和葉はハナちゃんをカゴの中に戻して、お風呂の準備をしてから浴室へ向かった。


  そして時は過ぎ、和葉がのんびりとお風呂に浸かっている頃、たまたま和葉の部屋の前を通った父親は、開けっ放しの扉の奥からハナちゃんのひとり言が耳に入った。

  思わず気になってしまい、部屋の中に足を踏み入れると……。



「タクマ ガ スキスキ  タクマ ガ スキスキ」



  ハナちゃんは覚えたての言葉を一生懸命復唱している。
  言葉をハッキリ聞き取る事が出来た父親は、一生懸命インコとのコミュニケーションを図っていた和葉を微笑ましく思った。



「あはは。インコが言ってる拓真とは、和葉の好きな人の名前かな。この子がうちにいると和葉の心の声が丸聞こえだね。……でも、あの子はお母さんにそっくりで素直に育ったんだね。拓真くんに大事にしてもらえるといいね」



  父親は顔をほころばせながらそう言い残して部屋を後にした。

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