LOVE HUNTER

伊咲 汐恩

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第七章

201.お前

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  ーー土曜日の朝が来た。
  言うまでもないけど、私にとって最も恐れていた日。
  だから、目覚めた瞬間から気分がどん底に。


  カーテンの隙間から差し込む日差しは明るい。
  残念ながら天気は快晴。
  でも、雨が降っても困っていたかな……。



  昨晩は寝付きが悪かったから、朝を迎えるのが妙に長く感じた。
  こんなに寝苦しいと思ったのは初めての事。

  カーテンを開けてからサイドテーブルに置いてある鏡を覗き込むと、寝不足によって目の下にはクマが出来ている。

  鏡の向こうの自分は自分じゃないみたい。
  顔色は悪いし、今にも泣きそうな表情をしている。



  秋から冬へと一直線に移り変わるこの季節。
  最近は日没が早まって、朝9時から夕方16時までの、計7時間は拓真家の敷地内に滞在している。
  そのうちの1時間は昼休憩だ。

  この時間は栞が現れるまで幸せなひと時だった。



  私はこれから農作業に行くかどうか悩んでいた。
  でも、畑が気になるのは紛れもない事実。


  よくよく考えてみたら、行ったら行ったで二人の仲良い姿を見せつけられてしまうだろうし、もし行かなければ栞は拓真と二人きりのラッキーな時間を過ごす事に。

  結局、結果がどちらに転んだとしても苦痛を味わうだろう。

  心の中で葛藤を繰り返した挙句、これ以上二人に距離を縮めて欲しくないから行く事を決意した。



  昨日は敦士が優しく髪を撫でてくれたからつい弱音を吐きたくなってしまったけど、ここ最近は精神的に参っていたから、一瞬胸に飛び込もうかと思ってしまった。

  でも、じっくり考えたらやっぱり拓真の代わりなんていない。

  どんなに苦しくても辛くても。
  我慢を強いられても。
  私の好きな人は世界にたった一人だけ。



  栞と懐かしい話題に一区切りつけば、きっといつもの拓真が戻ってくるかもしれないし。
  街に栞が戻って来てからまだ一週間しか経ってないから、結果を出すのはまだ早すぎたのかもしれない。

  もう少し長い目で見ていかないと気分が参っちゃうかもね。





  和葉は拓真の家に到着してインターフォンを押すと、玄関に出迎えてくれたのは拓真だった。
  きっと、初めて農作業に参加する栞の為に畑には出ていなかったのだろう。


  ここ一週間、ろくに話もしていなかったから、目が合うだけでバカみたいに胸が熱くなる。
  二人きりで話せなかった時間はたかが一週間程度だけど、それ以上の時間に感じていた。

  すると……。



「拓真、この作業着どうやって着るの?  ……あ、和葉さんおはようございます」

「あ……、おはよう栞ちゃん。もう来てたんだ」



  部屋の奥から玄関まで駆け寄って来た栞は先に到着していたようで、手にモンペを持ったまま軽い挨拶をしてから拓真の横についた。



「ぱっと見、前後がどっちかわからないな。えっと、こっちの中に紐があってこれが前だから、お前が持ってる方は前後ろ逆だな」



  『お前』……か。
  つい先日までは私をそう呼んでいたのに。

  こんな些細な会話ですら腹立たしい。



  私はモンペの着方なんて説明されちゃいない。
  ビニール袋の中に入ったモンペを部屋で渡されただけ。
  しかも、その後にいきなり農作業をすると伝えられた。

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