246 / 340
第九章
246.友達の計らい
しおりを挟む昼休憩を知らせるチャイムが鳴り、教師が教室から出て行くと、教室内は一気に騒々しくなった。
和葉は今朝コンビニで購入したパンが入っているレジ袋をカバンから取り出した。
普段は父親の手作り弁当だが、今日から暫く父親は地方へ出張へ行き、当分の間はコンビニ弁当に。
すると、和葉のクラスへ潜り込んだ敦士は和葉の机の前に立つと、レジ袋をヒョイと取り上げてニコッと微笑んだ。
「……さ、行こっか」
「え、何?」
「一緒にメシ食おう」
「えっ! なにっ? ちょっと、敦士! 待ってよ~」
敦士はレジ袋を高々と持ち上げて、鼻歌交じりで教室を出て行き、和葉は焦って後を追った。
敦士の右手にはレジ袋。
そして、左手には黒い袋に入ったお弁当箱らしきものを持っている。
廊下を先行く敦士は時たま後ろを振り返りながら、和葉の手の届かない所までレジ袋を持ち上げてプラプラと左右させる。
「おチビさん、悔しかったら取ってみてごらん」
今日の敦士はヤケに挑発的。
恐らくふざけ合いたいのだろう。
今はそんな気分じゃないけど、レジ袋は返してもらわなければならない。
「和葉様がそんな姑息な手にのると思う?」
和葉は鼻であしらい、一瞬諦めたような素振りを見せた。
しかし、これは作戦。
一旦油断させておいて、気の緩んだ隙にレジ袋を取り返そうとして思いっきりジャンプした。
ところが、ジャンプしたところまでは良かったが、和葉には最大の欠点があった。
身長は153cmしかなくて小柄。
レジ袋を高く掲げる敦士の前でジャンプを何度も繰り返しても、175cm超えと思われる長身敦士の手に届くはずがない。
もはや、このジャンプは無意味という事。
「ジャンプをしても全然レジ袋に届かないじゃん。もうっ、早く私のお昼ご飯を返してよ!」
「いいよ、返してあげる。でも、屋上に着いたらね。それまではだーめ!」
「どうして屋上なの? 屋上なんて行ってたら、友達がご飯食べ終わっちゃうよ」
「いーの! 俺、彼女達にお前の事を頼まれたから」
「……へ? どーゆー事?」
「お前の友達ってさ、美人なだけじゃなくて友達思いなんだね。今朝俺のクラスまで来て、『ここ最近和葉の元気がないから、お昼を一緒にして悩みでも聞いあげて』ってさ」
「え……」
「まぁ、俺は三人組の中でもお前がダントツでタイプだけど」
「もう、やめて」
今朝は保健室で横になっていたから、二人が敦士のところに出向いた事なんて知らなかった。
きっと、私が悩みを相談しなかったから、敦士になら口を割るかと思ったのかもしれない。
いま事実を聞かなければ、この先も知る事のなかった友達からの心配り。
一緒に飲みに行った金曜日。
そして、体調不良で保健室について来てもらった今朝。
祐宇と凛の二人は、一人きりで殻に閉じこもっている私を救い出そうとしてくれている。
和葉は二人の気持ちを知らされて口を黙らせていると、敦士は再び背中を向けて屋上へと足を進ませた。
「ほら、屋上行くよ~。早くしないとこのパン食っちゃうよ」
「待ってよ……」
和葉は敦士の後ろからブレザーの裾を引っ張って屋上へ向かう足を引き止めた。
「何?」
「あの……さ。好意は有り難いんだけど、体調が良くないから敦士と一緒にお昼ご飯を食べれる気分じゃないんだ」
今朝から気分は最悪だし、楽しくご飯を食べれるような元気もないから、いつも通り友達と一緒に食べるのがベストだと思っていた。
「じゃあ、一人きりでメシ食うの? 彼女達は俺に託したから、教室に戻ったとしても仲に入れてくれないよ。二人は両手を合わせまでお願いしてきたから」
得意げな表情で見下ろしてきた敦士からは、意地悪な返答が届けられる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写と他もすべて架空です。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる