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第十一章
307.涙の味
しおりを挟む「和葉ちゃんが久しぶりに来てくれたのに、あの子のせいで嫌な思いをさせちゃったね」
「ううん……、拓真は悪くないの。全部私のせい。自業自得なの。今までの考えが未熟だったから拓真を傷つけちゃったの」
和葉は反省がジワジワと込み上げてくると、再び肩を震わせて大粒の涙を零した。
頭の中には、凍りつきそうなほど冷たい目つきで睨んでる拓真の顔が思い描かれている。
すると、お婆さんは雨でビショビショに濡れている和葉の肩に暖かい手を添えた。
「和葉ちゃん。最初から未熟じゃない人間なんていないよ」
「え……」
「失敗は成功への架け橋に過ぎないんだよ。和葉ちゃんは、まだ成功への道へ繋げる坂道の途中だから不安で仕方ないでしょう」
「……坂道の、途中」
「大丈夫。きっと努力は実るから。二人の事情は知らないけど、和葉ちゃんの想いはっきり伝わってるはず」
「お婆さん……」
「それじゃあ、気をつけて家に帰るんだよ。風邪を引かないように、家に帰ったら暖を取ってあたたかくしてね」
お婆さんはそう言い伝えると、優しく微笑みながら手を振って去って行った。
雨と涙で視界は阻まれているが、小さくなっていく背中を見守る和葉は、お婆さんの言葉で少し勇気がもらえた。
親友のように話を聞いてくれた一人目の救世主の敦士が去ってから一人になってしまったかと思っていたけど、次は二人目の救世主の父親に救われた。
そして、今は拓真のお婆さんという心強い三人目の救世主にも救われた。
自分は最低最悪な人生の道のりを辿らされていたと思っていたけど、実は人に救われてばかりの幸運の持ち主なのかもしれない。
和葉は駅に到着すると、ホームのベンチに腰を下ろして紙袋の中からアルミホイルに包まれたおにぎりを取り出して一口かぶりついた。
梅干しの入ったおにぎりは、しょっぱい涙の味がした。
でも、同時に優しい味がした。
水筒の中身は水。
恐らく先に家を出て行った私を追いかける為に、大急ぎで中身を入れたと思われる。
そんな一つ一つの優しさや計らいが身震いするほど嬉しかった。
大丈夫。
私はまだ頑張れる。
応援してくれる人がいる限りくじけちゃダメ。
それに、きっといつか拓真に想いが届くはず。
和葉は咀嚼しているうちに体温が上昇していくと、お婆さんの心強いエールに力がみなぎって少しばかし前向きになれた。
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