313 / 340
第十二章
313.入籍の鍵
しおりを挟む「画像に写ってるのは、お母さんとおじさんだという事はわかるけど。……この赤ちゃんは、私?」
「あんた以外誰がいるのよ。そこの日付は、紛れもなくあんたの誕生日でしょ。これが決定的な証拠」
「……す、すると。お……おじさんが…………、わわわ……私の…………ほほほ本当のお父さんなの……?」
想像をはるかに超えるくらい願ったり叶ったりで声が吃った。
「そうよ。でも、肉親という事を隠していたのはお父さんの希望なの」
「えっ、おじさんの?」
「だから、雅和さんは本物の父親だって言ってるじゃない!」
「あ……そっか。でも言い慣れちゃって」
「和葉ちゃんは真実を知ったばかりだし、急に父親として受け入れるのは難しいから、ゆっくりで大丈夫だよ」
さっきは勢い余って口から飛び出してしまったけど、今は急展開にただただ気持ちが追いつけない事と、やっぱりおじさんと呼ぶのが馴れてしまっているせいか、急に『お父さん』と言うのは、正直呼びにくかったりもする。
「私達は再び結婚生活を決めたけど、入籍するかしないかは、和葉が『お父さん』と呼ぶ事と、父親としてちゃんと認めてもらう事が条件だった。すぐに入籍してもらえなかったのは、当時浮気をした私へのペナルティだったわ」
「私が二人の入籍の鍵を握っていたんだね」
「そーゆー事。お父さんは離婚してから和葉に父親らしい事を何一つしてあげてない事が心残りだったみたい。ちゃんと父親の役割を果たして、愛娘に認めてもらえたら入籍してくれると約束してくれたの」
「だから、以前『お父さんって呼ばないの?』って質問したんだね」
「そうよ。しかも、あんたは自分の口で言っておきながら、暫く名字が変わってない事に気付いていなかったし」
「あっ、そう言えば……」
「本当にバカね。……でも、早く入籍しないと、お腹の赤ちゃんが父親がいない子として誕生しちゃうから、一日でも早く入籍したかったの。和葉ったら『お父さん』って全然呼ばないし、こっちは出産まで時間がなくなってきたから焦ったわよ」
お母さんが物的証拠を見せてくれたお陰でおじさんが実の父親だと言う事が証明された。
そして、入籍の条件が、私がおじさんの事を『お父さん』と呼んで父親として認めるという事。
そこまでは詳しい説明があったからわかった。
ところが、『お腹の中の赤ちゃん』という、新たなキーワードが浮上すると、脳内処理は更に追いつけなくなった。
「お腹の赤ちゃんって?」
「あら、まだ気付いてなかったの? 私、妊娠しててあんたはもうすぐでお姉ちゃんになるのよ。ちなみに、もう7ヶ月だから」
母親は妊婦と思えないくらいスリムなお腹に手を当てて、愛情たっぷりにさすり始めた。
なかなか人のお腹に目線を当てる機会はないし、母親は具合がよくないせいか最近ゆったりめの服を着ていると思っていたが、まさかの妊娠。
和葉は再び衝撃的な事実を知ると、開いた口が塞がらなかった。
こんなにビックリするのは、もう顎が外れそうなレベルに。
「えぇ?! 私、もうすぐで妹か弟が出来るの?」
「つわりが酷かったし、妊娠の症状の頭痛が酷かったから、もうとっくに気付いてるかと……」
「吐き気は二日酔いかと……。頭痛は何かの病気の症状じゃなかったんだ」
「ちょっと待って、勝手に病気にしないでよ。しかも、お正月に『来年は三人で食卓を囲んでない』ってヒントを出したから、わかっていたと思っていたのに」
「あれは来年は四人で食卓を囲むって意味だったの? ………あっ、しかも思い返してみたら、お母さん『名字も変わってるかもしれない』とも言っていた。それはおじさんと入籍するからって意味だったの? だから、時間がないって……」
「……ってか、気付くの遅」
「もーっ! ちゃんと言ってくれないとわかんないよ!」
新しい情報が頭の中で渋滞を起こしていた。
結婚離婚を繰り返していてもきょうだいが出来る気配がなかったから、てっきりこの先もずっと一人っ子だと思ってたけど、数ヶ月後にはまさかの妹か弟が……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。
NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。
中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。
しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。
助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。
無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。
だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか?
NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる