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第十二章
317.愛情のかけ方
しおりを挟む「そうね~。復縁のきっかけはあんたの家出かな」
「えっ、私の家出?」
「そう。私の育て方が悪かったせいで、あんたは中学生の頃から家出を繰り返すようになった。一週間ぶりに帰って来ても、信じていたからこそ問い詰めなかった。でも、本当は気が気じゃなかったの。あの時は相当堪えたわ。部屋から物音がしない毎日はとても不安だったから」
もちろん、和葉は母親の想いなど知る由もない。
家出から帰って来た時に、いっ時の嘘でもいいから『心配したよ』とか『探したよ』とか言ってくれれば、あの時の気持ちは救われたかもしれないのに、母親はそういった気が利いた嘘さえ言えないほど正直だった。
だから、意外に思えた。
「でもね、ちょうど悩んでいた時、偶然街でお父さんと再会した。そこで、あんたの相談話を持ちかけたの。そしたら、お父さんも数年に渡って心配していて、親身に話を聞いてくれた。回数を重ねて会ってるうちにわだかまりは解けていった。それと同時に、『私にはやっぱりこの人しかいない』って思い始めたの」
「うん……」
「自分と和葉の気持ちを重ね合わせた結果、復縁話を持ちかけた。当然容易い事ではなかった。何度も頭を下げたのに、お父さんったらなかなか頭を縦に振ってくれなくてね。それでも、時間をかけて頭を下げ続けているうちにお父さんの心が動いてくれた。
そこから仮の結婚生活を送っていたんだけど、提示された条件が満たなかったから入籍出来なかった。人の想いは簡単に揺れ動かす事は出来ないものね」
「その条件というのが、私が『お父さん』と呼ぶ事だったんだね。」
「そうよ。それから間も無く妊娠が発覚した。日に日にお腹の子供は大きくなっていくのに、あんたがなかなか『お父さん』って呼んでくれないから正直焦ったわ」
「だから『時間がない』って。最初は何に焦っているのかさっぱりわからなかったよ」
「あんたは事情を知らなかったから、そう思うかもしれないね。お腹の子は父親の籍のない子として育てたくなかったし、あんたみたいに家出をするくらい辛い思いをさせたくなかった。だから、最終的には催促するような形にはなってしまったけど、あんたが今日こうやって父親として認めてくれた事にとても感謝している」
母親はそう言うと、安心したかのようにお腹に手を当てて瞳に涙を浮かばせた。
普段から本音を語らない母親だけど、自分とこれから生まれてくる赤ちゃんの先々の事をしっかり考えていてくれた。
《離婚》という切り札を出してから、まるで雪崩が起きてしまったかのように真実が明らかになっていき、最後は心臓が跳ね上がりそうなほどの幸せを手に入れられた。
だから、一度手に入れたこの幸せを、もう二度と手放したくない。
今日は生まれて初めて母親が好きになった、家族の思い出の一ページ目となる、特別な記念日に……。
愛情のかけ方は人それぞれ。
手の差し伸べ方だって、人さまざまだと言う事を知った。
私は他の家庭ばかりを参考にしていてワンパターンな考え方しか持っていなかったら、母親の気持ちなど汲み取る事ができなかった。
お母さん。
最後は私とお腹の子と自分の未来の為に、離婚という最大級のカードを使って大勝負に出たんだね。
失敗するリスクを抱えていたのに、二人の命を大切に守っていく為に心を決めた。
何だか今日のお母さんは凄くカッコ良かった。
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そして、私は未来に目を向ける大きな勇気をバトンタッチしてもらった。
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