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カーテン越しの君
15.素直な彼
しおりを挟む一度会話を交わした事によって親近感が湧いた紗南は、養護教諭が部屋から居なくなった隙を狙いカーテン越しから声をかけた。
「あの…、先日ここで★マークについて質問した者ですけど、私の事を覚えていますか? 今日も質問したいんですけど、★さんって芸能科なんですか?」
「…え、またあんたが来たの? これ以上質問しないって、あの時約束しただろ」
あの日と同様、ぶっきらぼうな返事が響く。
私は彼の声が届いた瞬間、不思議と目元が緩んだ。
まだ彼の顔も知らないのに…。
「あの約束はあの日限りです」
「なっ……」
「でも、ベッドサイドからベージュ色のブレザー見えていますよ」
「マジか?!」
ガバッと起き上がった後に服が擦れるような音。
多分、指摘されて制服をカーテンの向こう側に隠したと思われる。
ちゃんと横になっているのならベッドサイドからブレザーなんて見える訳ないのに。
単にカマをかけただけなのに…。
なぁんか、かわいい。
それがあまりにも単純に思えて可笑しくなった。
「ふふっ、嘘ですよ。でも、あなたの態度で芸能科って事がバレバレ」
「…マジで、冗談とかやめてくんねー?」
軽い冗談を言ったら会話のキャッチボールに繋がりそうだったので、前回途中だった話を続けた。
「上履きと書類を★マークにしたのは、ひょっとして名字が星とか」
「ブーッ。ほしじゃない、セイ。いっせいのせいのセイ」
彼は秘密主義者と思いきや、案外素直に答えてくれる。
「いっせーのせっのセイ? そんな名称のアイドルグループ名なんですか?私、芸能人にはちょっと疎くて…」
「うわっ、そんなダサいグループ名あるかよ。まぁ、別にいいや。……ゴホッゴホッ」
「あれ、セイくん風邪引いてるの?」
「昨日は仕事がハードだったから、今朝から喉の調子が悪い」
「いま飴持ってるけど、いる?」
「飴を持ってるならちょーだい」
ご本人の口から仕事って言ってたから、やっぱり芸能人なんだね。
調子が悪いとはいえ、彼の声は何度聞いても耳に残るような素敵な声の持ち主だ。
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