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第三章
26.カッコイイ怜
しおりを挟むーー土曜日。
私は澪と一緒に先日怜くんに誘われたサッカーの試合を見に来た。
現在は開始時刻前。
来校した観客はまばらに散っていく中、私達は校舎のサイドにある階段の観覧席に座った。
試合に出場する選手達はそれぞれのチーム側でストレッチをしたり軽くボールを触ってスタンバイしていると、到着に気付いた怜くんは子犬がしっぽを振っているかのように遠目から手を振った。
「美那っち~! 約束通り試合を見に来てくれたの~?」
「うん! 澪と一緒に来たよ」
「今日は俺のスーパートリプルプレイを見せてやるから、絶対最後まで見ててね~」
怜くんは人差し指を振り下ろしながら陽気な笑顔で輪の中へ戻って行った。
「……ったく、あいつは美那しか見えてないんだから」澪は呆れた目で腕を組んで深いため息をつく。
「そんな事ないよ。きっと幼馴染だから恥ずかしいんだよ」
「もう、美那は優しいんだから」
ーーそれから10分後に試合が開始した。
早速怜くんにボールが周ると、華麗なドリブルでディフェンスの隙間を狙って仲間にパスでボールを繋ぐ。
観客の吸い付く目線。
ディフェンスをものともしない強行突破。
怜くんにマークが増えると、ボールをサイドに周してディフェンスが離れた所で拾いに行く。
仲間は司令塔的存在の怜くんに声をかけながら、チーム一丸となって相手ゴールへと攻め込んだ。
「す……凄い」
多才なプレイに目が釘付けになって思わずひとり言が漏れた。
すると、澪は怜くんのプレイに目を向けたまま言った。
「あいつさ、幼稚園の頃からサッカー習ってて小学生の頃に大きな怪我をしてやめるかどうかの決断を迫られてた。あの時はなぐさめる事しか出来なかったよ。でも、あいつは続ける選択をした。辛いリハビリと人一倍の練習を重ねてね。中学の時に名門チームに入ってたんだけど、レギュラーになれなくてね。当時はサッカー部にも所属してて顧問に実力が買われてたから試合だけ参加してたの。練習にも参加しないのに試合だけ出されていたから、当然仲間から陰口をたたかれてたみたい。悔しくても続けられたのは大好きなサッカーが離れられなかったんだよね」
「だから怜くんはあんなに上手いんだね。仲間は信じてボールを周してるように見える」
「うん。怜が試合に入れば流れが変わるから。あいつもサッカーやってる時が一番活き活きしてる。本当にサッカーが好きなんだなって思わせるくらいね」
怜くんに目線が釘付けの澪の瞳はとてもキラキラと輝いていた。
ここが俺の居場所なんだと言わんばかりにプレイしている怜くんと変わらないくらい。
しかし、いま目線を向けてる方向の奥のフェンスには1人の男性が立っていた。
背丈や風貌からして滝原くんのように見えたけど、すぐ横を向いて奥へと歩いて行ってしまった。
それがあまりにも一瞬だったから、結局顔は確認出来なかった。
「美那。遠くを見つめてるようだけど、何かあった?」
「あっ、ううん。……何でもない」
私は見間違えだと思って澪に言うのをやめた。
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