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第四章
31.距離を縮める2人
しおりを挟むーー5月下旬。
私は学校帰りに街の景色を見ながら1人でのんびり帰宅していた。
「私が人間界に来た時はピンクの桜吹雪に包まれてたのに、花が散った後はあっという間に新芽が出てきた。桜の時期って案外短かったな~。ロマンティックだったのに」
季節を感じながら駅の方へ足を進めていると、前方には6、7人程度の人がまばらに歩いてるが、7メートルくらい先に前に歩いてた人が突然スッと道端に倒れた。
バサっ……
それに気付いてすかさず駆け寄ってしゃがみ込んで、「大丈夫ですか?」と顔を覗き込んで声をかけると、倒れた人物はなんと滝原くんだった。
「滝原くん? ……ねぇ、大丈夫? 滝原くん、滝原くんっ! しっかりして!」
生気のない顔を見た途端、ふと河合さんの言葉を思い出した。
『校外学習が終わるまで滝原くんに三回吸血する。例えターゲットが被っていても私は容赦しないから』
ここ最近体調が良く見えていたのに突然倒れたという事は、もしかしたら河合さんが吸血を?
私は悶々としながら身体を起こすと、滝原くんは薄目を開けた。
「…………あ、美那。どうして」
「良かったぁ……。道端でいきなり倒れたからびっくりしたよ」
「また倒れちゃったのか……。はぁ……、最近調子が良かったのに」
彼はふらりとした足でゆっくりと立ち上がると、私はシャツの袖を捲ってるひじから血が出ている事に気付く。
「大変! ひじが擦りむけてるよ。倒れた時に擦っちゃったのかな」
「あ……、本当だ」夏都はひじを上げてケガを確認する。
「早く手当しないと」
言葉ではそう言いつつも、血の香りに反応して胸がドクドクしている。
自分がヴァンパイアという事が煩わしく思うくらいに……。
私はそんな気持ちを断ち切るかのようにスカートのポケットからハンカチを取り出してケガをしてる部分に当てた。
「ありがとう。……でもさ、コウモリ柄のハンカチって珍しくない?」
「そうかな? 好きな生き物がコウモリだから、お母さんが探して買って来てくれたの。それより、鉄分を補給しなきゃいけない身体なのにケガをしちゃダメだよ」
「(好きな生き物がコウモリ? 変わってるな)そうだね。最近美那がご飯の面倒を見てくれるお陰で貧血だという事を忘れるくらい回復してたのに」
「じゃあ、明日はもっと栄養があるお弁当を作ってくるね!」
私が笑顔いっぱいでそう言うと、彼はフッと笑みを浮かべた。
「なんかさ、美那って母親みたい。食事の世話といい、ケガの手当てといい、面倒見がいいし……」
「もーっ!! 母親より親友の方がいいな」
「本当にいつもありがとう」
彼が私の髪をぐしゃぐしゃしながらそう言うと、私の頬は赤く染まっていった。
後方でその様子を見ていた怜は自転車のハンドルを握ったまま佇む。
美那と心の距離を縮める夏都。
そして、幸せそうに微笑む美那。
2人を眺めているうちに嫉妬心が生まれてイライラしてくると……。
「あらら。……あの二人いい感じだわ」
背後から現れた紗彩は耳元で嫌味ったらしくそう呟いて去って行った。
怜は余計なひと言に気持ちが逆撫でされると、紗彩の背中に向かって吐き捨てるように言った。
「俺には全っ然関係ねーし!」
怜は自転車をまたいで急発信させると、イライラをぶつけるようにペダルを漕いで紗彩の横を猛スピードで走り抜けていった。
その様子を後から見ていた澪は、人に聞こえないくらいの小声で「ばーか」と言って自転車を手で引きながら帰った。
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