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第二章

24.誕生日プレゼント

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  友達が来たのはちょうどお昼だったけど、窓の外からは17時を知らせるチャイムが鳴った。
  日没に合わせてチャイムが鳴るのは海の近くだから。

  すると、みんなはゲーム類の後片付けをして、リビングに居る母に「お邪魔しました」と一声かけて玄関に向かう。
  私は一緒に家の門まで行き、手を振りながら背中を見送った。


  楽しい時間はあっと言う間。
  谷崎くんは相変わらず口数が少なかったけど、料理やケーキを美味しそうに食べてくれた。

  ところが……。


  ピンポーン


  母親がインターフォンに出ると、モニターには先程帰宅したばかりの翔くんの姿が。
  再び彼の姿が目に映った途端、玄関へ走り向かった。
  忘れ物でもしたのかなと思いながら扉を開ける。


  ガチャ……



「谷崎くん、どうしたの?  何か忘れ物?」

「いや……えっと…………」



  翔はモジモジと照れ臭そうにカバンを開き、ガサゴソと何かを手に取った。



「これ、やる!  誕生日プレゼント」



  その何かを愛里紗の手に押し付けるように渡すと、顔を真っ赤にしながら逃げるように背中を向けて去って行った。



「えっ?!  あっ……あっ……」



  それがあまりにも急だったから、一瞬何が起こったかわからなかった。
  上手く言葉にならないまま走り去っていう背中を目で追うだけ。

  すると、彼は7、8メートル先で突然クルッと振り向いてニカッと笑顔でひと言。



「バイバイ、また明日!」



  そう言って、手を振りながら来た道を再び走って帰った。
  玄関に取り残されてキョトンとしながらも、彼の照れた表情を思い返したら可笑しくなった。


  部屋に戻ると、受け取ったばかりのプレゼントの袋を学習机の上で開けた。
  袋の中に入っていたのは、かわいいキャラクターものの鉛筆五本と消しゴム。
  片方ずつ手に取って眺めていると、思わず彼の顔が思い浮かんだ。



  谷崎くん、一体どんな気持ちでプレゼントを選んでくれたんだろう。
  さっきは顔を真っ赤にしながら渡してくれたけど、渡す時はどんな気持ちだったのかな。

  想像するだけでも照れ臭いけど、プレゼントが本当に嬉しかった。
  でも、それ以上に嬉しかったのはお祝いの気持ち。

 彼からの初めての贈り物は、受け取ったその日に宝物に……。


  今日は12年間の中で、一番になるくらい最高な誕生日になった。

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