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第二章
27.ミクの告白
しおりを挟むーー今日はずっと楽しみにしていた修学旅行の日。
早朝から最寄り駅で集合して近隣の小学校と共に修学旅行専用列車に乗り込んだ。
普段乗り慣れない対面式の座席に興奮し、期待に胸を踊らせているみんなの気分は上々。
だけど、谷崎くんとの間に心の距離感を感じながらの旅行はどうも気分が乗らない。
ガタンゴトン…… ガタンゴトン……
進み行く列車と共に身体が揺らされて……。
車中では友達と仲良く話したり。
時には景色を楽しんだり。
トンネルに差し掛かる度に友達と一緒に息を止めたり。
数時間に渡る長い長い列車の旅。
親元を離れた一泊二日間の旅は、成長の証とも言えるだろう。
昼に現地へ到着。
清々しい空気をたっぷり吸い、気分をリラックスさせる。
集合写真を撮り終えてから観光先のお寺へ。
その流れで来場者専用のフリースペースに移動して持参したお弁当を食べた。
昼食終了後、私達は班同士で集まり担任の前に並んだ。
「各班で決めた観光場所を周って下さい。時間になったら宿に集合します。何かあったら各班に一つずつ配布した携帯電話で速かに連絡して下さい」
「はーい」
生徒達は指示どおりに別れて班行動を開始。
谷崎くんとは相変わらず話は出来ていないけど、今日は一度も目を合わす事もなく視界から消えていった。
親友のように仲良くしていたのが嘘のよう。
自由行動から戻るとクラスごとで順番に入浴して、学年全体で一斉に夕食を済ませて、その後はレクレーションでダンスを踊った。
一泊二日の修学旅行は、一日の内容がすし詰め状態で、小学生の私達には過密スケジュールに。
ーー夜、場所はホテルの部屋。
疲れてあくびが止まらないほど眠かったけど恒例の恋バナで盛り上がり、下がりつつあった目も興奮のあまり全開に。
部屋は仲が良い友達同士だったので、遠慮せずに楽しめた。
ところが、恋バナで盛り上がってる一方で、別の場所では事件は起こっていた。
その事件とは、見回りに出ている教師の目を盗んで、ミクが翔くんを宿舎の階段付近に呼び出して告白をしたという。
噂話として聞いたのは翌朝の事。
告白の件を耳にした瞬間、先日班決めをしていた際に耳に入ってきた告白話を思い出した。
あの時聞こえてきた会話はミクだったんだね。
しかも、その相手が谷崎くんなんて。
話が聞こえてきた時は、ただただ勇気があるなって……。
今までミクの気持ちには気付かなかったけど、ずっと谷崎くんが好きだったのかな。
告白後の様子が気になって仕方ないよ。
もちろん、これはあくまで噂話。
どこまでが本当でどこまでが嘘なのかわからない。
それにしても、胸がムカムカしたり、身震いしそうなくらい不安に襲われてるこの気持ちは一体何なんだろう。
私もミクに負けないくらい谷崎くんが好きなのに。
これからもずっと谷崎くんの隣にいたい。
笑顔を独り占めしたいよ。
愛里紗は好きという気持ちに気付きつつも、前身していない自分にやるせなさを感じていた。
限界を迎えた途端、トイレに駆け込んで個室にこもった。
不安に溺れているせいか、すぅっと息を吸うと熱い大粒の涙がポロポロと溢れ出す。
手の甲で拭っても拭っても滝のように溢れて止まらない。
鼻をすすらぬようにして声をかき消しなが、周りの人に気づかれぬように個室の中で静かに泣いた。
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