初コイ@進行中 〜忘れられない初恋相手が親友の彼氏になっていた〜

伊咲 汐恩

文字の大きさ
30 / 226
第二章

28.会いに来た愛里紗

しおりを挟む



  ーー修学旅行から帰って来てから、今日で三日目。
  谷崎くんとミクのその後が気になるばかり、土日の間も部屋にこもって泣いた。
  でも、気は晴れる事はなく、散々泣き腫らした目はとても熱く重く感じている。



  修学旅行から帰宅するなり閉ざした部屋で泣きこもる娘に母親は心配しつつも、そっとしておく事に。



  ミクが谷崎くんに告白したのは、12年間の中でトップニュースになるほどショッキングな出来事だった。
  嫉妬と不安の狭間で気持ちが揺れ動いていたけど、無情にもいつも通りの日常生活がそこに待ち受けている。


  重い足取りで登校したけど、丸一日学校で過ごしていても告白結果が見えてこない。

  谷崎くんもミクも普段通り。
  休み時間は友達と一緒に過ごしているし、誰一人ミク達の噂話をしていない。

  一瞬、噂は聞き間違いではと思ってしまうほど静かで穏やかな一日だった。



  谷崎くんの気持ちが不透明な分、結果が気になる。
  でも、自分は何もしないまま泣いてばかり。
  ミクは勇気を出して頑張ったのに、私は後ろ向き。
  こんなに思い詰めるくらいなら、自分も悔いなく頑張らないと。



  そう、その調子。
  私の恋はまだまだ頑張れる。
  ウジウジ悩んでないで、谷崎くんと直接気になっている事を聞けばいい。

  そして、私もミクのように勇気を出して想いを伝えないと。



  気持ちを奮い立たせた愛里紗は学校から帰宅して部屋に荷物を置いてから、翔と二人きりで話す為に神社へ向かった。



  谷崎くんに告白……。
  私にもできかな。
  そんな勇気を持ち合わせているのかな。

  でも、いま気持ちを伝えないと何故か私達の関係がダメになってしまうような気がしてならない。
  ミクに谷崎くんを取られたくない一心なせいか、少し気焦りしていた。

  靴が脱げそうなほどの勢いで神社へ走った。
  心臓がバクバクと鼓動を打ち、神社に到着してから深呼吸を繰り返して乱れた呼吸を整えてもなかなか落ち着かない。



  告白を決意した愛里紗は鳥居前で恐怖と不安と戦いながらソワソワしていると……。
  神社の角からポケットに手を突っ込みながら渋い顔をしている翔がやって来た。

  愛里紗は翔が一歩一歩近付いてくる度に緊張で震えが止まらない。



  どうしよう……。
  谷崎くんがこんなにすぐ来ると思わなかったから、まだ心の準備が……。

  今更だけど逃げちゃう?
  見つからなければ告白は引き返せるかも。

  ううん、ダメ。
  いま逃げたら後悔する。
  谷崎くんとしっかり向き合わなければ心にしこりが残ったままになってしまう。



  愛里紗は心の中で葛藤を繰り返してオロオロしていると、接近してくる翔とバッチリ目が合う。
  翔は久しぶりに神社に訪れる愛里紗を見た瞬間、ハッと目を見開いた。



「江東……」



  噂が始まったあの日以来、愛里紗の足が神社から遠退いていたから驚くのも無理はない。

  愛里紗は緊張で意思通りに手足が動かない。
  飲み込んだはずの唾は喉の奥に流れていく感覚がないし、髪の毛が逆立っているかのように気が張っている。

  それでも気持ちを伝えたくて、漬物石が乗っているかのように重くなっている足を進ませて翔の正面に立った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...