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第二章
29.亀裂
しおりを挟む「あ……、あのね……。私、谷崎くんに話があるの」
「うん、何?」
翔は心を見透かしそうなほど真っ直ぐに見つめている。
愛里紗は目線に戸惑いながらも、もう後戻り出来ないと思ってグッと息を飲んだあと勇気を振り絞って口を開いた。
「修学旅行の時にミクが告白したって人から聞いて……」
「あぁ、……うん」
「それで、谷崎くんがどんな返事をしたかがすごく気になって……」
「……」
「あっ……あのっ。ほら、ミクってカワイイから、男子なら誰でも好きになっちゃうって言うか、いい子だし何て言うか………」
「えっ?」
愛里紗は急に早口になったり、しどろもどろ話したりと、不安定な気持ちを丸出しにしていた。
だが、翔は徐々に表情を曇らせていく。
頭の中は話したい事が渋滞していて支離滅裂に。
自分でも言ってる事がわからないし、彼も困惑している。
でも、話はまだ核心に迫っていない。
当然ミクへの返事が気になるけど、自分の想いも伝えたい。
想いを伝えなければ悩み抜いた数日間以上に後悔してしまうのではないかと思って先走りしていた。
「でっ……でも、ミクだけじゃなくて私もずっと谷崎くんの事が……」
話はいよいよ核心に迫っていこうとした、次の瞬間。
「何言ってんの? お前も他の奴らと一緒なの?」
翔は話を聞き入れるどころか、目を吊り上げて火の粉を浴びせた。
一方の愛里紗は、激昂する姿に心臓が止まりそうなほど驚く。
「他の奴らと一緒って……。何言ってるかわから……」
「ふざけんな!」
翔は言い訳をする隙を与える間なく怒鳴った瞬間、まるで落雷が起きてしまったかのように二人の間に亀裂が入った。
「久しぶりに来たと思ったら、俺の気持ちも考えずに根掘り葉掘り聞いてきて……。こっちはひどく悩んでいるのに」
「谷崎くん、ごめん。そーゆー意味じゃ……」
「帰れ! もうこれ以上話を聞きたくない!」
翔は不機嫌のままクルリと背を向けると、愛里紗はショックで頭が真っ白に。
どうしよう。
誤解された……。
谷崎くんを怒らせようと思ってここに来た訳じゃないのに。
愛里紗は心のすれ違いによって居た堪れない気持ちになると、泣きべそをかきながら走り去った。
私は自分の事で精一杯で、彼の気持ちも考えずに突っ走っていた。
噂話が私の耳にも入ってきたくらいだから、きっと周りの人に同じ事を何度も言われ続けていたはず。
それなのに、彼の気持ちを考えずに言いたい事ばかり押し付けていた。
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