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第三章
64.最高に幸せな1日
しおりを挟む「ええっと……。実は中学ん時に付き合ってた元カレなの。色々あって最近再会したばかり。今は同じ塾に通っててね」
「えっ?! あんな超イケメンくんと付き合ってたの?」
「あはは、……うん。チャラくて参っちゃうけどね」
「玄関でちょっとしか会ってないからよく分からないけど、理玖くんって明るくて人懐っこそうだったよ」
理玖と再会した経緯は簡単に説明出来たけど、冗談でキスされそうになった話はとてもじゃないけど言えなかった。
話にひと区切りつくと、咲は手荷物のカバンの隣に置いてある小さな紙袋を手に取って両手でハイと差し出した。
「誕生日おめでとう! これは私からのプレゼント」
「嬉しいーっ! ありがとう。今年のプレゼントは何かな?」
咲は去年も同じように家に泊まりに来てプレゼントを手渡してくれた。
受け取ったばかりの紙袋の中を覗くと、手の大きさくらいの箱が入っている。
プレゼントに期待しながら箱を開けてみると……。
中には、ピンクやオレンジなど暖色系のラインストーンでデコレーションされている、見た事のないほど豪華な万華鏡が入っていた。
「うわ~、万華鏡なんて懐かしい!」
「早速中を覗いて見てみて。キラキラしてキレイだよ」
咲の言う通り、光が入るように万華鏡を斜め上に傾け、中を覗いて時計回りに回してみると、ラメやビーズやスパンコールが沢山入っていて、内側の鏡に反射してキラキラと輝いていた。
「キレイ……。でも、どうして万華鏡を選んだの?」
「プレゼントを悩んでた時、ちょうどこの万華鏡が目に入ったの。クルクルと回して見ているうちに愛里紗のキラキラ輝いてる笑顔っぽく見えて……。だから、プレゼントするならこれだなって」
この万華鏡がキラキラ輝いてる笑顔っぽい?
そうかな……。
自分じゃ自分の姿は見えないから分からないけど、咲はそう思ってくれてるんだね。
ちょっと照れ臭い。
「プレゼントも嬉しいけど、咲がそう思ってくれてる事の方が嬉しいよ。本当にありがとう」
「私も愛里紗に喜んでもらえて嬉しい。17歳おめでとう!」
「咲からもらったプレゼントも大事だけど、私には咲が一生の宝物だよ」
ーー今日、私は二つの誕生日プレゼントを貰った。
理玖と咲。
それぞれ大切な友達から。
勿論、プレゼントは嬉しかったけど、友達というお金では買えないほどの価値のある存在に感謝をした。
17回目の誕生日が、自分にとって最高で幸せな1日に。
夕飯を済ませてからお風呂に入り、恋話で盛り上がってから、寝る為に照明を落として咲と同じ布団に潜り込んでから約1時間。
目を閉じても。
寝返りを打っても……。
羊の数を数えても…………。
全っ然眠れないわ!!
睡眠を妨害してるのは間違いなくあいつ。
昼間のキス未遂事件があまりにも刺激的だったから脳裏に焼き付いている。
咲は私が昼間にアクシデントが起こっていた事さえ知るはずもなく平和に眠っている。
それでも何とか寝ようと思って暫くぼんやりしてたけど……。
『じゃあ、プレゼントのお礼はキスでいいよ』
理玖の言葉を思い出してしまった途端、ぼんやりしていた目がパッチリと覚めた。
唇が10センチ手前まで近付いて息が唇に触れた瞬間、胸がドキドキして破裂しそうだった。
あの時は冗談って言ってたけど、本当に冗談だった?
冗談にしてはレベルが高くない?
私達はもうとっくに別れてるのに……。
色々考えていたら再び思い出してしまった。
理玖とファーストキスをした時の事を。
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