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第四章
72.彼氏自慢出来ない現実
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中学生の頃の翔くんは、本ばかり読んでいるような物静かな存在だった。
時より遠くを眺めながら寂しそうな目をしていて。
返事や必要最低限の話しかしないような人。
彼が人と距離を置いてる理由は、噂で聞いた両親の離婚にショックを受けた事が原因だと思っていた。
一度目の告白は、中二の秋。
中一の頃に一目惚れから始まっていき、決意を胸に一途な想いを告げた。
『ごめん、忘れられない人がいるから』
翔くんは私に隙を与えず告白を断った。
二度目の告白は、中三の卒業前。
諦めがつかなくて卒業前に思い残さぬようにと再びアタック。
だけど、返事は……。
『好きな奴と付き合いたいから』
感情を揺れ動かす事なく再び告白を断った。
二度フラれても、諦めるとかマイナスな気持ちにはなれなかった。
恋の思い出は時に美化されてしまうもの。
手に入らなければ余計に欲しくなる。
それから春が訪れて、それぞれ違う高校へ。
私達に足りないのは距離感。
だから、もっと知ってもらおうと思って三度目の告白を決意。
愛里紗の家には告白の相談をするつもりで泊まりに行った。
でもちょうどその日、小学校の卒業アルバムに写っている幼い彼の写真を偶然にも見つけてしまい、そこで知ってしまった。
愛里紗が抱いていた恋心と、翔くんの忘れられない人が愛里紗という事を……。
二人の事を考えているうちに気付いてしまった。
もし二人が何かのきっかけで再会してしまったら、私の恋は……。
だから、余計に心を繋ぎ止めたかった。
実は告白する時に少し手段を選んだ。
お互い親の不仲という共通の悩みを抱えていたから、一番近くで支えて欲しいと伝えた。
すると、彼は『好きになるかは分からないけど』と、過去の恋に終止符を打つかのように受け止めてくれた。
いざ交際をスタートさせても、彼の心の中で愛里紗の存在が生き続けているせいか、私を彼女として見てくれていない。
キスどころか手をつなごうともしない。
恋人として空回りしている結果が、卑屈な想いを生み出してしまった。
それに、初めての彼氏なのに親友に胸を張って紹介出来ないし、名前すら言えないし、写真すら見せれない。
理想の恋どころか人形に恋してるような現実。
虚しさに拍車がかかる一方。
大好きな彼との初めての恋を、大好きな親友に応援されたかったのに。
本当は堂々と彼氏自慢したかったのに。
それに、好きな気持ちに順番は関係ない。
小学生の頃の愛里紗の気持ちが100%だとしても、中学生の頃の私の気持ちも100%だった。
ただ、出会う順番が前後してただけ。
愛里紗に奪われまいとひた隠ししている醜い自分がいる。
そんな現状も知らずに、愛里紗は私の恋を応援してくれる。
それどころか、私の悪口を言っていた一組の女子から救ってくれたのに……。
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