初コイ@進行中 〜忘れられない初恋相手が親友の彼氏になっていた〜

伊咲 汐恩

文字の大きさ
212 / 226
第九章

210.謝罪

しおりを挟む

✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼



「絡み合った指先と~♪  二人見つめ合った笑顔と~♪」

「……あれ?  その曲って、KGKのセイのソロデビュー曲の《For you》じゃない?」


「うん、最近この曲流行ってるよね。セイの魅力が存分に引き出される曲だよね。今このバラード曲に激ハマリ中なんだ」



  咲が道端で口ずさんだ曲は、別れた恋人への想いを断ち切れない恋心を綴った曲。
  序盤はピアノ伴奏から。
  この曲は私の今の心境を語っているかのよう。

  それは、口ずさんでいる咲自身も同じなのかなと思ってしまうほど。



  私達は駅前のファーストフード店に入り、ハンバーガーのセットをそれぞれ注文した。
  商品トレーを受け取って、空いてる二階席に腰を下ろす。

  腰を落ち着かせてから袋を乱雑に開いてハンバーガーにかぶりつくと、正面の咲は両手を膝に下ろして慎ましく口を開いた。



「先日はごめんね。愛里紗の言う通り翔くんの事で悩んでた。あの時は、未だに執着してると思われたくなかった」

「私こそ配慮のない言い方をしてごめん。きっと、言いにくかったんだよね」


「謝らないで!  ……私が悪かったから。愛里紗との間に溝を作っていたのは私だったし」

「そんな事ないよ」



  本当は咲が悪い訳じゃない。
  いくら親友と言えども、元カノの私に翔くんの話を相談しろというのは無理があった。

  でも、私自身も親友としての立場と、翔くんの元カノいう立場の狭間で苦しめられていた。
  それに加えて、理玖とも関係が不安定だから気持ちのバランスが取れない。



  すると、咲は冷たいドリンクを両手で包み込んで言った。



「私、一人の女性として愛されたいし、心から愛せる人と一緒になりたい。だから、これからは辛い過去を捨てて前を向いていこうと思ってるんだ」

「咲……」


「中学生の頃から翔くん以外の人は考えられなかったから、簡単に忘れる事は出来ないけど、いつかは忘れないとね」

「うん」


「愛里紗の卒業アルバムを見た時に、そろそろケリをつけなきゃなって思いつつも、思いが断ち切れなくてつい思い浸っちゃった。でも、私を大切に想ってくれる人がいるからケジメをつけなきゃね」



  咲はそう言うと、少し照れ臭そうにして目尻を細めた。
  私は予想外の言動にエッと驚く。



「えっ、それって……」

「今はまだ次の段階へ進めないけど、いつかは木村くんの気持ちに応えたいと思ってる。……実は、毎日のように好き好きって言われて困ってるの」


「……え、ノートや教科書を借りるくらいしかアピールが出来なかったあの木村が?」

「告白された後からすれ違いざまに小声でそう言ってきたり、電話してる時に言ってきたり、ノートの切れ端に書いてそれを手渡してきたり。木村くんったら、毎日バリエーションが豊かだから参っちゃうよね」



  と、咲はまんざらでもない様子であははと苦笑い。
  過去の恋から卒業に向けた前向きな意思は、新しいスタートラインに立つ為の準備を始めている。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

先生

藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。 町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。 ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。 だけど薫は恋愛初心者。 どうすればいいのかわからなくて…… ※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

処理中です...