これが一生に一度きりの恋ならば

伊咲 汐恩

文字の大きさ
12 / 33

11.二人の関係

しおりを挟む


 ――6時間目の体育の授業中。
 バスケットボールでドリブルシュートを決めた藍は外野で体育座りをしている私の方を見て笑顔で言う。

「あやかぁ、いまのシュート見てたぁ?」
「見てたよ~。凄いね!! ナイスシュート!」
「あやかのことを考えてシュートを打ったよ」
「バーーカ! 純粋にスポーツに打ち込んでよ!」

 彼のアピールが強すぎて周りから笑いを誘う。
 でも、彼の本気度が伝わってる分、冷やかす人なんていない。
 藍は勉強もできるし、スポーツも万能。
 しかも、甘いルックスに人懐っこい性格。
 いままではクラスメイトとしてしか見ていなかったけど、最近はいろんな面を持っているんだと思うように。
 すると、みすずは隣から肘で小突く。

「彼氏やるじゃん」
「彼氏といっても期間限定だけどね」
「こんなに愛されてるんだから早く気持ちに応えてあげればいいのに」
「好きならまだしも……。私の中では仲の良い友だち程度! ……ほら、人ってそんな簡単に好きになれないでしょ」
「なにか特別なきっかけがあれば好きになる?」
「そんなの、わかるわけないじゃん……」

 最近つくづく思う。
 恋とはなんだろうかと。 
 梶くんを見てドキっとしていた感覚は、最近藍の勢いに負けてるというか……。

「なんかさぁ、こんな中途半端な時期に他の学校に転校ってどうなんだろうね」

 急に話題が変わったのでみすずの方に目を向けると、目線の先はいまコートの中に入って練習試合をしているひまりちゃんへと向けられている。
 だから、彼女を指してるとすぐにわかった。

「ひまりちゃんのこと?」
「そうそう。しかも、転校先に幼なじみってなんか臭わない?」
「偶然だって。みすずの考えすぎ」
「そうかなぁ。なぁ~んかひっかかるんだよね。…………うひゃっ!!」

 急にみすずの上部からタオルが降ってきて二人でその方向を見上げると、そこには坂巻くんが立っている。

「みすず、そのタオル持ってて」
「うん、いいよ! これから試合?」
「そ。行ってくる」

 と、コートの中に向かう坂巻くん。
 どうやら選手交代の時間が来た様子。
 私は彼が”みすず”と呼び捨てしていたことが気になっている。

「なになに、坂巻くんといい感じじゃん」
「そんなことないよ~。あやかたちには敵わないって」
「そ、それは……。藍が近づいてくるからノリでというか」

 口を尖らせていると、ひまりちゃんは練習試合が終わったようで手を振りながらこっちへやって来る。

「二人で楽しそうに喋ってるけど、なんの話?」
「川嶋さんは石垣くんの幼なじみだったんでしょ? 昔はどんな感じだったの? 彼女とか好きな人とか」
「ちょ、ちょっと! みすずったら。やめなって!」

 ムキになったままみすずとの間に割って入ると、ひまりちゃんから笑顔が消えた。

「藍は昔から好きな人なんていないよ。……人を好きになっちゃいけない人だから」
「……それ、どういうこと?」
「だって、藍はね……」

 と言いかけてる最中、藍が背後から現れて「お前、いい加減にしろよ」と明らかに不機嫌な口調を浴びせる。

「いいじゃない、別にこれくらい……」
「ちょっと、話あるから来い」

 藍はひまりちゃんの腕を引っ張って体育館の外へ連れて行く。
 当然、その場に残された私たちは不穏な空気に包まれたまま。 

「石垣くんが人を好きになっちゃいけないってどういう意味だろうね」
「さ、さぁ……」

 藍はひまりちゃんが来ると不機嫌になる。
 それに、ひまりちゃんは藍の秘密を握ってそうな雰囲気に。
 本物の彼女じゃなくても気になる。
 二人は一体どういう関係だったんだろう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

処理中です...