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新世代
プロローグ
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雪解けの季節を迎えると、それに合わせるかのように一年の計画を開始する必要が出て来る、特に新規開拓村を抱える、テオドール達にとって、今年は正念場であった。
一年かけてなんとか形にした村が今年からいよいよ生産体制に入るのだから期待も大きくなる、開墾を進めた土地に作付けを行うことによって、いままでは完全な金食い虫でマイナスのみだった村が今年からプラスを少しでも出せるようになる、それでかなり違ってくる、そう思わなければやっていられなった、ユリアーヌスとヒルデガルドの補佐をしていた、従士のブンターとホレスも財政問題に関していつも渋い顔をしていた。
まだまだ赤字経営は続くのだが、移住者の中に多数の逃亡者が出ていない事も喜ばしい事であった、貧困に負け、盗賊に身を堕とす者も一定数いるのが世の常であるが、移住希望者は、侯爵の命令で身元のしっかりとした者を厳選して送ってもらった事もあり、大多数は過酷な環境にめげずよく頑張っていた。
そんな中でテオドールにとって最大の懸念材料は戦争であった、今までは自領の近辺もしくは伯爵領くらいまで気を配っていればそれほど問題はなかったのだが、新村開拓事業で侯爵や国王に多大な借りが出来てしまったため、中央からの招集を断りづらくなってしまった側面があった。
南や西で起きた紛争にまで駆り出されていたら、報奨金が出ても割にに合うかどうかは微妙なところであろう。
「状況的に、今年は呼び出しが来るような大規模紛争はあるかな?」
夕食の席で徐に尋ねた、絶対的な回答が得られるとは思っていなかった、ただ『ないと思う』という回答がほしかっただけだった。
「まぁ行く事になったらその前にもう一人仕込んでから行ってよね、娘一人じゃ後継者の問題に不安が残るしね」
誰もが思った『貴族令嬢のセリフとは思えない』と、年々口が悪くなる気がする、果たして彼女の子供が成人する歳になったらどのくらい口が悪くなっているのであろうか?想像すると恐ろしい気がする。
アルマも胸に抱いた女児に少し同情の目を向けた、グリュックとフローはまだヨチヨチ歩きだが以前ほど手がかからなくなってきたため、今はほぼヒルデガルドが産んだアンネマリーに掛かり切りになっていた。
「今のところ、きな臭い動きは見えてこないようですな、突発的な軍事衝突などは予想できませんが、大規模侵攻などをかける場合、事前準備で大凡の動きは読めますからな」
そういう回答が欲しかったのだ、流石にカイは理解していてくれて助かった。戦争がなさそうだという予想を聞き領地運営に専念できると皆が安堵する中で、アストリッドだけは不満であった、顔にこそ出さなかったが、彼女はここでの生活が退屈で仕方なかった、侯爵領では領内巡回の任務で盗賊などとの遭遇戦もあり、実戦の中で剣を振るう機会もあった、しかしこちらに来てからはそういった機会さえ全くなかったのだ。
盗賊とて実入りのいい街道での悪事を計画するであろうが、このような僻地では実入りも碌にみこめず、下手をしたら死神の部隊を敵に回すかもしれない、そんなところに好き好んで出没する盗賊団など全くいなかった。
『神様どうか戦争が起きますように』
彼女は半分冗談気味にそんな事を祈っていたら、王都から狙ったように早馬がやって来た。
王家の紋の入った封書を恐る恐る開けて見ると内容は意外な物であった、
「王様が結婚するって」
皆がよからぬ報せではなかった事に安堵している中で、一人だけは内心で舌打ちをしていた。
一年かけてなんとか形にした村が今年からいよいよ生産体制に入るのだから期待も大きくなる、開墾を進めた土地に作付けを行うことによって、いままでは完全な金食い虫でマイナスのみだった村が今年からプラスを少しでも出せるようになる、それでかなり違ってくる、そう思わなければやっていられなった、ユリアーヌスとヒルデガルドの補佐をしていた、従士のブンターとホレスも財政問題に関していつも渋い顔をしていた。
まだまだ赤字経営は続くのだが、移住者の中に多数の逃亡者が出ていない事も喜ばしい事であった、貧困に負け、盗賊に身を堕とす者も一定数いるのが世の常であるが、移住希望者は、侯爵の命令で身元のしっかりとした者を厳選して送ってもらった事もあり、大多数は過酷な環境にめげずよく頑張っていた。
そんな中でテオドールにとって最大の懸念材料は戦争であった、今までは自領の近辺もしくは伯爵領くらいまで気を配っていればそれほど問題はなかったのだが、新村開拓事業で侯爵や国王に多大な借りが出来てしまったため、中央からの招集を断りづらくなってしまった側面があった。
南や西で起きた紛争にまで駆り出されていたら、報奨金が出ても割にに合うかどうかは微妙なところであろう。
「状況的に、今年は呼び出しが来るような大規模紛争はあるかな?」
夕食の席で徐に尋ねた、絶対的な回答が得られるとは思っていなかった、ただ『ないと思う』という回答がほしかっただけだった。
「まぁ行く事になったらその前にもう一人仕込んでから行ってよね、娘一人じゃ後継者の問題に不安が残るしね」
誰もが思った『貴族令嬢のセリフとは思えない』と、年々口が悪くなる気がする、果たして彼女の子供が成人する歳になったらどのくらい口が悪くなっているのであろうか?想像すると恐ろしい気がする。
アルマも胸に抱いた女児に少し同情の目を向けた、グリュックとフローはまだヨチヨチ歩きだが以前ほど手がかからなくなってきたため、今はほぼヒルデガルドが産んだアンネマリーに掛かり切りになっていた。
「今のところ、きな臭い動きは見えてこないようですな、突発的な軍事衝突などは予想できませんが、大規模侵攻などをかける場合、事前準備で大凡の動きは読めますからな」
そういう回答が欲しかったのだ、流石にカイは理解していてくれて助かった。戦争がなさそうだという予想を聞き領地運営に専念できると皆が安堵する中で、アストリッドだけは不満であった、顔にこそ出さなかったが、彼女はここでの生活が退屈で仕方なかった、侯爵領では領内巡回の任務で盗賊などとの遭遇戦もあり、実戦の中で剣を振るう機会もあった、しかしこちらに来てからはそういった機会さえ全くなかったのだ。
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『神様どうか戦争が起きますように』
彼女は半分冗談気味にそんな事を祈っていたら、王都から狙ったように早馬がやって来た。
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「王様が結婚するって」
皆がよからぬ報せではなかった事に安堵している中で、一人だけは内心で舌打ちをしていた。
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