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ラニウスと過ごす日常 2

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 今日もお日柄もよく、ワタクシとラニウスは家の中でお喧嘩をしておりましたとさ。
「おいてめぇゴルァ! ふざけんじゃねぇ!」
 今日も響くのは俺の怒号、声だけ聞くとまるで俺がDV夫みたいだが、それは違う。こいつが悪い。
 何故なら、こいつは俺が入ってるのに風呂に入ってきたからだ。
「なんで朝から風呂入ってんねん! 女かお前!」
「お前し〇かちゃんに謝れよ! 男だって風呂が好きなんだよ!」
「誰やねんそれ」
「知らねぇのは当たり前だよな!」
 俺にとって風呂とは一人になれることが出来、色々と考え事を整理が出来る場所だ。故に少々長風呂になっちまうかもしれないが、それでも入ってくる事はないだろう。
「あんたの小さいナニなんか興味ないわ、もっとデカくなってから出直せや」
「はぁぁ!? てめぇざけんじゃねぇぞ! 俺のナニが小さいだぁ!?」
「小さい小さい! まだ子供の方がでかいんちゃうか?」
 こいつケラケラと馬鹿にしたように笑いながら言いやがって! 男にそれは言っちゃダメだろうが!  男の子だって傷つくんだぞ!
「なら確認しろよ!」
「なっ!? あんた変態やな!!」
「うるせぇ! こちとら男のプライドをズタズタにされてんだ! つべこべ言わずに見やがれってんだ!」
「やめい!!!」
 ラニウスに腹部を良い感じに殴られて、俺はその場に倒れてしまった。
 全く、こいつはもうちょいお淑やかさってのを身につけろってんだ、そうすればまだマシになるのに。

 さて、俺達はパイセンであるメアリーに職場に呼び出されていた。というのも、先日から一緒に暮らしてるわけだが、近隣住民から苦情が届いているらしい。それもそのはずだ、なんたって日夜問わずに怒鳴り声が聞こえるんだからな。そりゃ苦情も出るわ。そして、メアリー名義の家であるため苦情がメアリーの元へと行く、という事での呼び出しだ。
「お前ら、もう少し仲良くは出来ないのか?」
「そりゃぁ無理って話だぜメアリー、どうしたって反りが合わねぇんだからよ」
「せやせや、ハナから仲良うなろうとせぇへん二人が上手くいくわけあらへん」
 お互いため息を吐きつつ、睨み合った。確かにこいつとは反りが合わねぇ、それも壊滅的に、だ。俺がもう少し丸くなりゃぁいいだけの話なんだけどな。
「……お前らは一応相方同士になるんだ、もう少し上手くやらねば大変だぞ」
「相方?」
 聞くと、騎士は二人一組が基本らしく巡回や休暇も、二人で揃って行うそうだ。それでメアリーは俺とラニウスを組ませる予定だったらしい。
「……まぁ、だが、お前らがその調子なら無理だろうな」
「無理やわ。こいつと常一緒やなんて気狂うわ」
「は? てめぇ口の利き方には気をつけろよ」
 俺はラニウスと額と額をぶつけ合った。久しぶりだぞ、こんなにメンチを切ったのは。
「……全く、わかったわかった、明日にでもお前らの相方を変える、今日一日は好きにしろ」
 深いため息を吐き、メアリーは頭を抱えてそう言った。ふん、と俺はすぐに部屋を後にした。
 何をするでもないが、イラついた頭を冷やすにはやはり散歩だ。俺は町を歩き始めた。
「はぁぁ……女ってめんどくせぇ、っとすまねぇ」
 不意に方に衝撃が来たと思えば、前から歩いていた奴に当たってしまった。俺の不注意であるため、素直に謝り、去ろうとしたが肩を掴まれた。
「いてぇな! こりゃぁ骨が折れてるかもしれねぇな!」
「うっわマジかこいつ」
 とりあえず、古い詐欺師だな、と思いつつその男の顔を思い切り殴り付けた。そんなにヒョロいから骨が折れんだよ、カルシウム取れカルシウム。
 めんどくせぇ、と心の中で何度も繰り返し俺は再び町の散策を始めた。
 歩き続けているとふと、以前ラニウスと入った喫茶店の目の前に来ていた。はぁ、なぁんでこんなとこ来ちまうかね? 来ちまったものは仕方ねぇし、寄っていくか。
「いらっしゃい、おや、この前の」
「お久っす」
「おやおや、何かあったのかい?」
 マスターは親しみのある笑みで口角にシワを作り、以前俺が頼んだものと同じものを出してくれた。
 ラニウスとの一件をマスターに話すとほっほっほ、と笑っていた。
「私は君とラニウスがとても合っていると思ってるんだがねぇ」
「いやいや、マスターそりゃないっすよ、あいつと俺は水と油ですよ。顔を合わせりゃ喧嘩で疲れるし……」
「……自分と張り合える存在は楽しいだろう?」
 マスターの優しい笑みと言葉に俺は静かに頷いた。確かに楽しくないわけじゃない。殴り合いの喧嘩もするし、罵詈雑言が飛び交う口喧嘩もする。だからといって本心から嫌いなわけじゃない。
「君達はね、少しばかり正直になれないんだ。だからこそぶつかってしまう。こういうのは時間は解決してくれない、解決しようとしなければ解決しないんだ、まずは君が正直になってみては?」
「……そう、っすね……はぁ、マスターあざっす! あっ、支払いはラニウスにツケといてくださいっす!」
 そう言ってコーヒーを飲み干すと、俺は手を振りながら見送ってくれるマスターに頭を下げつつ、家に居るであろうラニウスに会いに走った。
「クソ、なんで俺があんな女のために体力使ってんだよ! あぁイライラするぜ!」
 家に着く頃には俺は汗だくになり、息も切れ切れだった。汗を拭い家の扉を開け入っていくとテーブルに頬杖をついているラニウスの姿があった。
「おい、馬鹿女」
「なんや、馬鹿男」
 俺はラニウスの前に座り、一言だけ本音を伝えた。小っ恥ずかしいが、仕方ねぇ。
「相方、てめぇと組みてぇんだ」
「奇遇やな、うちもや」
「……俺は如何せん正直者じゃねぇ」
「知っとるわ、せやけど、悪い奴やない……せやさかい、うちはアンタと相方組むんや、後悔させんといてや?」
 握手を求めてくる相手の手をじっ、と見つめた後ハイタッチのように相手の掌を軽く弾いた。
「握手なんて柄じゃねぇだろ」
「……ははは! せやな!」
 その後、俺達はパイセンメアリーにやはり相方になるという事を伝え、正式にペアになる事が決まった。さぁて、これから大変だぜ。

「なぁラニウスよぅ、なぁんでこんな状況になってんだ?」
「なんでやろうな、多分これには深ぁいわけがあるんや」
「よし殴る」
 とりあえず一発だけ殴ろう、そう思えるほどに部屋が汚い。何故こんなにも汚く出来るんだ? 謎だ、不可解だ、理解不能だ。
「自分ちょっと神経質ちゃうか? それともいらちか?」
 このクソ野郎、足の踏み場もない部屋を見たら、誰だって俺みたいになっちまうっての。
 俺は綺麗好きなんだ、自分で言うのもなんだがな。だからラニウスの自室の惨状がとてつもなく許せない。
「てめぇもうちっと家事できねぇのか?」
「なにゆーとんねん、うちはもうものすごい、その、家庭的や」
 おう、部屋の惨状を再確認してから言ってくれや、とツッコミながら、俺は脱ぎ散らかしている上着や下着を綺麗にたたみ始めた。
「あっ! そこ開けたアカンで!」
 あん? と言いつつクローゼットを開くとそこにはラニウスの性格からは、想像も出来ないほどに可愛らしいフリフリの服が沢山あった。あぁ、好きなのねこういうの。
「もー! 開けんなや! 見んなや! ほんまデリカシーない男やのう! せやからモテへんねん!」
「そのまんまてめぇにお返ししてやるよ! てか、モテねぇわけじゃねぇし、ただ興味ねぇだけだし」
「え、自分女より男が好きなん?」
「ちげぇ!!」
 しかし、一枚だけ綺麗に畳まれている服があった。以前俺が買った服だ、ったく、こういうとこは可愛いんだよなぁ。
「随分と大事にしまってんのな?」
「当たり前や、人から貰ったもんは大事にせなあかんやろ」
 可愛いやつだ。常にこういう態度で居てくれたら、俺だって可愛がってやるのによ。もうそりゃぁよしよししまくるぜ。

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