異転生の虚友撃

ナナホシ

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衝撃

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家族からの愛を受けながら、特に変化のない日常をおくり続け、気が付けば六歳となっていた。前の世界なら小学校に入ろうかという歳だ。
ここ数年でそこそこの力がつき、ある程度自由に動けるようになったある日のこと。

双子の妹、エリカが一体何者なのかを知る事となった。


俺はいつものように朝食の準備を手伝うために、リビングへとやってきた。

「お母さん、お手伝いしにきたよ」

身長が小さく、まだ机に届かない俺たちのために父さんが作った台に乗り、笑顔を作った。

「あら、リリィ。今日はエリカがやりたいっていってるんだけど、妹に譲ってあげてくれるかしら」

エリカが料理をしたいと言い出すとは珍しい、そう思った。
いつもは食器の準備をしたり、部屋の掃除をしたりしていたのだが、俺が料理を手伝っているのを見てやって見たいと思ったのかもしれない。
特に嫌がる理由は無いので頷き、いつもはエリカがやっていることをやることにした。

「ありがとう、リリィ」
「ふぅ、いつも助かってるぞ、2人とも」

家の周りに時たま現れる魔物退治を終えた父さんが、汗を拭きながら頭を撫でてくれた。

俺たちの住む家は山腹に位置するため、頻度こそ低いものの魔物に襲われることがある。だから、家まで入らないように父さんが退治してくれているのだ。

「そうね。いつもありがとう」

お礼を言われる様なことはしていないと思う。火を使うところは危ないと言うことでさせてもらえないが、味付けなどは全てやらせてくれる。趣味である料理ができて俺は満足しているし、趣味が母さん達の役に立つなら本望だ。

「ふふ、お部屋を片付けてくるね」

軽快に台をおりて、部屋に向かった。尤も、毎日のようにエリカが綺麗にしてくれているから、片付けるといってもやることはそんなに無いんだけどね。


全ての部屋の片付けが終わった頃、エリカと母さんの方もちょうど料理が出来上がった様だ。 初めて料理を手伝うエリカだが、上手くできたのだろうか。
朝から運動をしたお陰でいい感じにお腹が空いているため、何が出てくるか楽しみで仕方がなかった。

「今日は、ハンバーグにしたわよ」

ハンバーグと聞いて思い出す。生きている時に最後に作った料理だ。あれからもう六年も経っているのだと考えると、なんとも言い表せない気分になる。
他のみんなは元気にしているのだろうか。今まであまり考えないようにしていたが、机の上に置かれた料理を見るとどうしても思い出し、考えてしまう。

「リリィ、どうかしたのかい?」

椅子に座らずにいつまでも立ったままの俺を心配するように、リアムは顔を覗き込んだ。
その顔を見て我に返った俺は、なんでもないよと言って椅子に座った。

次々と机の上に運ばれるハンバーグは、とても綺麗に出来上がっていた。材料などは流石に多少違うようにみえるが、ぱっと見た感じはハンバーグそのものだ。
懐かしさを感じながら箸を握り、一斉に挨拶をした。

『いただきます』

早速箸を使って一口サイズに分け、口に運んだ。その瞬間、思わず笑ってしまった。材料は違えど、とても美味しかったからだ。

「これは上手いな」
「まったくその通りです」

嬉しそうに父さんが言うとリアムも頷き、美味しいよとエリカに伝えた。

「少し教えただけなのに野菜を切るのもすごく上手でね」
「そ、そうかな」

みんなから褒められてとても恥ずかしそうにするエリカだが、その顔からは成功してよかったという安心が見てとれた。

もう六年も一緒にいるというのに、妹についてほとんど何も知らないんだな。部屋が一緒であるため話をすることは多いが、そのほとんどが家族についての話題だ。
もちろん子供らしく遊ぶこともあるが、別段話をすることはない。

普通の双子の姉妹とはこういうものなのだろうか。...深く考えすぎているだけなのかもしれないな。無駄なことばかり考えているとせっかくの美味しいご飯が不味くなってしまう。料理を口に運びながらそんなふうに思った。


あっという間に食べ終わり、母さんたちは片付けを始めた。俺も手伝おうと思ったのだが、今日は大丈夫だと言われたため部屋でごろごろしている。
エリカは片付け中ということで、部屋には俺一人だけだ。ごろごろ転がれるほどの部屋で一人というのは些か寂しいものがあるが、最近考え事をすることがよくあるから、こういう時間は存外悪くないかもしれない。

というのも、学校に行ってみたいと考えていたり、みんなを探しに出たいとも考えていたりする。
魔法が発達しているこの世界では、魔法が使えないと不便なことが多い。なにより、せっかく夢のような世界に来たのだから、極限まで習いたいと思うのは普通だろう。

探しに出ることについては、転生したというのに過去の人たちを追うなと言われてしまうかもしれないが、この世界に来た目的はそこにあるので、なんと言われようと探そうとは思う。だが両親には何と言って家を出ればいいのやら。

「父さんと母さん、鈴木さん、悠斗と隆志、梨花さん。みんなは今どこにいるんだろうか」

家族にも会いたいが、親友である二人にもまた会いたいと思う。それに、使用人の人たち。鈴木さんなんて案外、若返った自分を見て感動に身を震わせているかもしれない。
などと馬鹿なことを考えていると、先程までは感じなかった気配を背後から感じた。

勢いよく後ろを振り返ると、エリカがひょこっとこちらを覗いていた。いつから居たのかは分からないが、今の独り言を聞かれてしまったかもしれない。

「いつからそこに居たの?」
「今帰って来たところだけど」

いつも通りの喋り方で問いかけると、変に思う素振りなどはなく返してくれた。

「そうなんだ」
「う、うん。それで...今のは」

今のというのが一体何のことなのかは火を見るよりも明らかだが、敢えてしらを切った。

「なんのこと?」
「ひょっとして、リリィは健君なのかな」
「え...」

予想もしていなかった名前を出され、少し動揺してしまう。同時に、その呼び方には覚えがあった。数少ない知り合いの中で、俺を健君と呼ぶ人は一人しかいない。

「梨花さんなんですか」

まさか本当にそうだとは思っていなかったのか、俺の言葉に面食らいながらも肯定するエリカ。
こんなに近くにいたのに今まで気がつかなかったのかと思うと笑いたくなる。

「女の子だし違うよねって思ってたけど、やっぱり健君なんだね」
「なんで俺だと思ったの?変な空間で変な奴に会って言われたとか」

あいつから転生者がいると聞いている可能性は十分にあるが、直接話をしていない人間も相当数いると言っていた。その場合、他に転生者がいることなんて分からないはずだ。

「変な空間は知らないな。健君だって思ったのも今しがただし」
「奴から聞いてないならなんでそんな風に分かるのかな。普通ならあれは聞き流してしまっているところだと思うんだけど」

確かに軽々に名前を出してしまった所為でというのはあるだろうが、転生者がいるということを知らない人間があれを聞いても何かの間違いかと思って聞き流してもいいはずだ。
それなのにエリカはそれをしなかった。それがなぜなのか知りたい。

「私は自分だけが選ばれた人間だなんて思ってないだけだよ。私がこうなんだから他の人もこうなんじゃないかってね」

なるほど、最初から全て聞いていた俺はそういった考えに至ることができなかった。主人公じゃあるまいし、自分だけが転生者である可能性は低い、確かにその通りだ。

「なるほど。そっか」
「ふふ、でもあれだね。私たち子供になりきれてなかったよね」
「確かに。梨花さんだとは思いませんでしたけど、エリカのことを怪しいと思ってました」

そこからしばらく、再開できた喜びから他愛もない話をし続けた。
その中で、いくつか約束をした。

この世界では俺が姉であるため、お互いのことを知ったとはいえいつも通り接すること。
そして、転生者であることが悟られるようなことを極力しない。
転生者であることを悟られるのは良いことなんじゃないかと思っていたのだが、この世界において転生者とはどういうものなのか分からないうちに、そういうことをするのはまずいだろうという話になった。
純粋に頭のネジが飛んだ奴だと思われる可能性もあるしな。

「これからもよろしく、エリカ」
「こちらこそ、リリィ」

俺たちは笑顔で握手をして、いつものリリィとエリカに戻った。
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