モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている

光命

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第133話 ゾルダの動揺と憎悪の影 ~アグリサイド~

ん?
今、一体何が起きた?

確かあの時、俺が振った剣がラファエルを掠めた。
今まで空振りだったのがようやく当たって喜んだのもつかの間だった。
その時足についていた鎧が落ちてきたのを拾ったはずだった。
そう拾っただけだったのだが……

「なんで女の人に絡まれているんだ?」

俺にベッタリと体をつけてガシッと腕を組んで離さない。
痛いぐらいに掴んでいるので、離れることも出来ない。
顔は笑っているものの、目だけが冷たく光って見えていた。

「女の人って、そんな他人行儀な言い方はないわね。
 わっちよ、わっち」

「そんなこと言われても、こっちになんか知り合いはいないし……」

俺以外にこっちへ来たって聞いたことも見たこともないから、赤の他人のはずなんだが……
思わずゾルダの方に顔を向けると、あのゾルダが驚いた表情でポカンとしている。

「お前は……
 いや、あなたは……」

驚いた中でも、何かを話そうとしているようだが、言葉になっていないようだ。

「もしかして……ゾルダのお知り合いかなにかでしょうか?」

恐る恐る抱きついている女の人に確認をする。
するとその女性は

「知り合いも知り合いだよなぁ、ゾルダ!」

ドスの効いた声でゾルダを睨みつけている。

「あ……姉貴?」

ゾルダの口からまたも身内を思わせる一言が出てきた。

「えっ?
 この人、ゾルダのお姉さんなの?」

弟が危ないとの話が出てきたと後は、お姉さんの登場か。
いったい何人姉弟なのか?

「いや……
 正確には、ワシの父の妹じゃ……」

ゾルダが随分遠回しな言い方をしている。
少し気にはなったが、俺は気にせずに

「あぁ、おばさんね」

と言ったとたん、掴んでいた手の力がさらに入ってきた。

「わっちのこと、おばさんって言ったわね。
 どうしてくれようかしら」

俺の事を睨みつけて顔を寄せてくる。

「ご……ごめんなさい……
 お……ゾルダのお姉さまでいらっしゃる?」

「そうよ、あの生意気な小娘の姉のヒルダよ」

なんだか怒りが全面に出ているというか、さっきからだいぶ攻撃的だな。
別の意味の女王様っぽい感じもする。

「しかし姉貴……
 なんか昔と変わっておらんかのぅ。
 その喋り方かしておらんかったと思うのじゃが……」

「そうかな?
 昔っからこうだったような覚えが……
 ぐっ……頭が……!
 誰が……わっちの中で喋っているの!?」

ヒルダは突然顔をしかめて言葉を止める。
ゾルダは心配そうに見ている。
こんな表情、今まで見たことがない。

「大丈夫か、姉貴?
 姉貴も封印されていだのじゃろ?」

いつものトーンと違う声も聞いたことがないような声だった。

「そんなことはどうでもいいわ、あんなところに閉じ込められてむしゃくしゃしているの?
 それに……
 無性にあなたのことが憎いわ。
 何故かしら?
 もしかして、ここに閉じ込めたのはゾルダかしら?」

一方的に捲し立てて話すヒルダにゾルダは声も出せないでいる。

「ヒルダ様、そのようなことはありません。
 そこに封印したのは……」

セバスチャンが割って入ってきて事情を説明し始めるも、ヒルダは聞く耳をもっていない。

「セバス!
 あなたの教育がなっていないから、こんな子に育っているんじゃなくて?
 ゾルダにはお仕置きが必要ね」

俺を掴んでいた手を離すとゾルダの方へと近づいていった。
ゾルダも警戒してか距離を保とうとする。
それでも近づいていこうとするヒルダがゾルダを追いかけ始めた。

俺がその場に腰を落とすと、近くにはセバスチャンが居た。

「ねぇ、あれなんなの?」

「さあ……なんでしょう……
 私にもよくわかりません」

長年仕えているセバスチャンがわからないなら、俺には絶対にわからない。

「なんかいつもゾルダと違うし、追いかけられているし……
 もしかして、ヒルダは強いの?」

「そうですね。
 まともに戦えばお嬢様の方が強いかと思います。
 今はヒルダ様の性格が前と全く変わってしまったことに戸惑っておられるのかと」

「性格が変わった?」

俺からすると叔母に全く頭が上がらないという風にしか見えていない。
厳しい親族って感じがする。

「はい、あのような人格の方ではなかったのですが……」

ヒルダはずっとゾルダを追いかけまわしていた。
時には暴言を吐きながら

「この、のろま! 世間知らず!
 だからダメなんだよ」

時には魔法を放ちながら

「ブリザードアロー!」

ヒルダから放たれた氷の矢が、空気を裂いてゾルダの頬をかすめた。

「あぶなっ!」

すぐさまゾルダが反撃するも、全く効いている感じがしない。

「ったく……姉貴、それは言い過ぎなのじゃ。
 ワシだってしっかりしおるのじゃ。
 姉貴はもっと優しかったのじゃ……」

ゾルダもヒートアップしてきたのか、ヒルダの動きを止めようとやっきになっている。

闇の炎ブラックフレイム

ゾルダ得意の魔法にもヒルダはびくともしなかった。

「その程度で、わっちをどうにか出来ると思っているのかい、このヘタレが!」

次から次へと暴言と魔法の嵐をみまっている。
そのヒルダの周りには薄紫の影のようなものが全身を覆ってずっとついていた。

「ていうか、あれ……影?
 なんでホラー展開になってんの俺……?
 ヒルダさんはいつもあんな感じ?」

影が気になった俺はセバスチャンに確認する。

セバスチャンは何度か目を擦りながらヒルダの事を見ていたが

「私にはそのようなものは見えません。
 アグリ殿には何か見えるのでしょうか」

どうやらあの影は俺にしか見えていないようだ。
性格が変わったという話といい、もしかしたらあの影が何か影響しているのかな。

「うん、俺にははっきりと見えるんだけど……」

「そうなのですね……」

首をかしげているセバスチャンは不思議そうにヒルダをずっと見ていた。
俺もまたヒルダを目で追いかけていると、背にまとわりつく紫の影が、ゆらりと形を変えた。
まるで彼女自身が、誰か別の存在に操られているように見えた。

その間もゾルダとヒルダの追いかけっこは止まらない。
というか拍車がかかってきている。
飛び交う罵詈雑言だけでなく、魔法も桁違いになってきた。
怯まず受け続けるヒルダに対して、ゾルダは次から次へと魔法を放つ。
ゾルダも手加減はしているのだろうけど、ヒルダの打たれ強さは凄いの一言だ。

「でもこのままでは……」

なにか打開策がないか考えていた時にセバスチャンが

「実はヒルダ様は……」

俺の耳元でごにょごにょと昔のことについて話始めた。
それを聞いた俺は

「確かに今とは全然違うね。
 やっぱり何か仕掛けられているのかもしれない」

とは思ったものの、何かいい手が浮かんできたわけではない。
それでもまずはやってみよう。
昔の性格があれならば、その性格を思い出させることをしてあげればいいのかも。

そう考えた俺は、追いかけっこをするゾルダたちに近づいていった。

「よし……だったら思い出させてやる。
 本当の“ゾルダの姉”ってやつをな」
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