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第3話 パペット
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------ 第3話 パペット ---------
「どれ、私たちは一度着替えてくるから、玄関で待っててくれ」
そう言われてから15分。
私は玄関か山々に咲いている桜を眺めながら彼らが着替え終わるのを待っている。
「…にしても人形ねぇ。トウキョウの奴らに話したらどんな顔するんだろう。トウキョウにあんな動く人形なんてなかったのに、あそこからでればこれが普通なんだよなぁ。」
そんな独り言をつぶやいていてふと思い出したのはジンというシキガミの言葉。
『ほう、あの隔離都市からか。』
隔離都市。
そう、隔離都市という単語だ。
そう言われてみればおかしな点はいくつもあった。
トウキョウから別の都市に出るときは必ずゲートを通らなければならなかった。
まるで国境を越えるかのように。
たかが同じニホンの別な都市に移動するだけなのに、ボディチェックや持ち物検査、金属探知機なんかも受けた。
まるでトウキョウだけが別の国みたいに。
「…久様?雪久様?」
肩をトントンとたたかれ私は思考の海から現実に引き戻される。
隣を見ると、譲さんの人形であるシグマさんが立っていた。
彼女は先ほどの戦闘スーツのような恰好から黒いスーツへと恰好が変わっていた。
「何か考え事でもしていたのですか?そろそろマスターがこちらに来ますので、もう少々お待ちください。」
「え、あ、うん…。」
それから数分後、奥から譲さんが出てきた。
「ごめんなさい、あまり外に出ないから洋服着るのに手間取ってしまって…」
出てきた譲さんの恰好は…
「…マスター、それしか洋服はなかったんでしょうか?」
「え、えぇ。あんまり着ないものだからこれしか。」
某小学生探偵漫画のブラックな組織のボスのような恰好をしていた。
もちろんトレードマークの帽子付きで。
あ、もちろん、煙草は口にはくわえていない。
「いやはや、遅くなってしまって済まない。」
そして龍さんも着替え終えたようで奥から出てくる。
…先ほどとは別な着物でさらに言えばかんざしに煙管…。
ちなみに着物の色は紫だ。
「…なんだか申し訳ありません、雪久様。」
シグマさんが何かを察したようで先に私に謝罪をしてきた。
「い、いや、大丈夫です、はい」
正直な、とても正直な感想を言おうではないか。
私この人たちと一緒に歩きたくない。
出歩くなら絶対杏さんとがいい。
「では、行こうか。電車で隣の街までいくがいいかな?」
「………はい。」
誰か助けてください。
それからは周りの視線にさらされながらそれ以外のトラブルは何もなく無事隣街に来ることができた。
その間の出来事やらなにやらは聞かないでくれるとうれしい。
龍さんの話では腕利きの制作士がこの街にいるらしい。
彼の案内でついた場所は…。
大きな洋館だった。
…これだけじゃ曖昧か。
正確に言うなら、薄暗い山奥の周りには雑草ボーボーと生え、館はツタで全面がびっしり覆われたホラー映画のテンプレといもいえる洋館だ。
もう帰りたい、切実に。
龍さんは何のためらいもなく扉の戸をドンドンドンとたたく。
「シェロ爺!シェロ爺!」
大声で洋館の主であろう人の名前をよぶ。
するとすぐ、扉が開き顔を出したのは前髪で顔を隠した少女がこちらの顔をうかがうように出てきた。
「やぁ、シヴィラちゃん。シェロ爺はいるかな?」
「いる…。工房。案内。ついてきて。」
そういって彼女は扉を全開にし、奥へとすたすた歩いていく。
龍さんたちは彼女の後に続いていく。
…気が進まなかったが、私も彼らの後についていくことにした。
それからただただ奥へ歩くこと数分。
これまた大きな扉が見えてきた。
シヴィラと呼ばれた少女は扉を控えめに2回ノックした後、小さな声で
「シェロ爺様、お客様。」
といった。
すると勝手に扉が開き、薄暗い部屋の奥では人形をいじっているみたところ70前後のお爺さんがいた。
「…おぉ、宮崎ンとこの坊やか。よくきたのう、整備かぃ?」
「あぁ、うちの息子の人形とそれと新しいのをもう1体。」
「新しいのぉ?おぬしらはみな契約すんでおろう…が…?」
老人がこちらへ向き直り、私を見てピタりととまる。
「…ほう、なるほどのう。そういうことかい。シヴィラ、明かりをつけておくれ。」
少女が明かりのスイッチをつけると目が一瞬眩むほどのまばゆい光を後、部屋が明るく照らされる。
あたりを見回すと、部屋一面、天井、床、壁いたるところに人形が飾られていた。
「うわ、すっご…。」
「ほっほっほ、おぬし見たとこによるとこの子らを見慣れておらぬな?」
「はい…、こっちにきて初めて見たんで。」
「なるほどなるほど、どれ、好きなのを選ぶといい。どうせ金に関しては坊や持ちじゃろうからな。」
好きなのを選べと言われても、目移りどころかありすぎてどうしたらいいかわからない。
ロボット、少女、少年、メイド、執事、ぬいぐるみ、クマのはく製…。
剥製もありなのか…。
戦車、小さな軍隊。
ウサギが二足歩行してるものまで。
「シェロ爺、さすがにこの量から好きなのを選べというのも意地悪な話だと思うぞ?」
「なぁにをいう、見た目で選ぶほうが良いに決まっておる!」
……ガシャン!
ガチャ!
鍵を開けたような音が部屋中に鳴り響く。
上から気配を感じて上を見上げる。
「イヤッハァァァァァァァ!」
「え?」
私の上から声が聞こえ、デッサン人形が落ちてくる。
通常の大きさよりもかなりでかい…、っていうか成人男性と同じくらいの
大きさのが。
「ヤァァァァリィィィィィィ!」
「嘘ぉぉぉぉぉぉぉ!?」
私の上に落ちてきた。
「…大丈夫ですか?雪久様。」
反射的に閉じた目を恐る恐る開けるとシグマさんがそのでかいデッサン人形をキャッチしていた。
「あ、ありがとう…」
「いえ、どういたしまして」
キャッチされたデッサン人形は私の顔を見るとまた喜ぶような声を上げる。
先ほどよりはうるさくはないがやはりうるさい。
その人形をみて老人は固まっていた。
ついでにいうとその場の全員が固まっていた。
そんな空気などお構いなしにデッサン人形はしゃべる。
「やぁ、かわいこちゃん、あんたがおれの目を覚まさせてくれたのかい?いやぁ、感謝するぜぃ!40年間もあんな鳥かごの中にいたらこっちの気が狂うか狂わないかギリギリのとこでようやくあの鍵が開いてよう!嬉しさの勢い余って飛び出しちまったぁ!おれっちとしたことがとーんだドジしちまったぜ!」
しゃ、しゃべるな、このデッサン人形。
なんか、あれだ、ランプの魔人みたいな感じだ。
「…まさか、こいつが動き出すとは。」
「しかも、自分から喜んで動き出すとはのぅ。この子は特別な血統の子かぃ?」
「少なくとも私の知るところではこの子の親は普通だったぞ。」
「あ、あのぉ、この人形は一体?」
デッサン人形はいつの間にか私の隣に陣取っていた。
デッサン人形、口も目も表情もないデッサン人形。
それが私の隣で口笛を吹いている。
「あんたの名前は?あぁ、まずはおれから名乗らないとな、おれはパペット!これからよろしくな!相棒!」
みんなは引いているが、私は案外こいつのノリが嫌いではない。
「どれ、私たちは一度着替えてくるから、玄関で待っててくれ」
そう言われてから15分。
私は玄関か山々に咲いている桜を眺めながら彼らが着替え終わるのを待っている。
「…にしても人形ねぇ。トウキョウの奴らに話したらどんな顔するんだろう。トウキョウにあんな動く人形なんてなかったのに、あそこからでればこれが普通なんだよなぁ。」
そんな独り言をつぶやいていてふと思い出したのはジンというシキガミの言葉。
『ほう、あの隔離都市からか。』
隔離都市。
そう、隔離都市という単語だ。
そう言われてみればおかしな点はいくつもあった。
トウキョウから別の都市に出るときは必ずゲートを通らなければならなかった。
まるで国境を越えるかのように。
たかが同じニホンの別な都市に移動するだけなのに、ボディチェックや持ち物検査、金属探知機なんかも受けた。
まるでトウキョウだけが別の国みたいに。
「…久様?雪久様?」
肩をトントンとたたかれ私は思考の海から現実に引き戻される。
隣を見ると、譲さんの人形であるシグマさんが立っていた。
彼女は先ほどの戦闘スーツのような恰好から黒いスーツへと恰好が変わっていた。
「何か考え事でもしていたのですか?そろそろマスターがこちらに来ますので、もう少々お待ちください。」
「え、あ、うん…。」
それから数分後、奥から譲さんが出てきた。
「ごめんなさい、あまり外に出ないから洋服着るのに手間取ってしまって…」
出てきた譲さんの恰好は…
「…マスター、それしか洋服はなかったんでしょうか?」
「え、えぇ。あんまり着ないものだからこれしか。」
某小学生探偵漫画のブラックな組織のボスのような恰好をしていた。
もちろんトレードマークの帽子付きで。
あ、もちろん、煙草は口にはくわえていない。
「いやはや、遅くなってしまって済まない。」
そして龍さんも着替え終えたようで奥から出てくる。
…先ほどとは別な着物でさらに言えばかんざしに煙管…。
ちなみに着物の色は紫だ。
「…なんだか申し訳ありません、雪久様。」
シグマさんが何かを察したようで先に私に謝罪をしてきた。
「い、いや、大丈夫です、はい」
正直な、とても正直な感想を言おうではないか。
私この人たちと一緒に歩きたくない。
出歩くなら絶対杏さんとがいい。
「では、行こうか。電車で隣の街までいくがいいかな?」
「………はい。」
誰か助けてください。
それからは周りの視線にさらされながらそれ以外のトラブルは何もなく無事隣街に来ることができた。
その間の出来事やらなにやらは聞かないでくれるとうれしい。
龍さんの話では腕利きの制作士がこの街にいるらしい。
彼の案内でついた場所は…。
大きな洋館だった。
…これだけじゃ曖昧か。
正確に言うなら、薄暗い山奥の周りには雑草ボーボーと生え、館はツタで全面がびっしり覆われたホラー映画のテンプレといもいえる洋館だ。
もう帰りたい、切実に。
龍さんは何のためらいもなく扉の戸をドンドンドンとたたく。
「シェロ爺!シェロ爺!」
大声で洋館の主であろう人の名前をよぶ。
するとすぐ、扉が開き顔を出したのは前髪で顔を隠した少女がこちらの顔をうかがうように出てきた。
「やぁ、シヴィラちゃん。シェロ爺はいるかな?」
「いる…。工房。案内。ついてきて。」
そういって彼女は扉を全開にし、奥へとすたすた歩いていく。
龍さんたちは彼女の後に続いていく。
…気が進まなかったが、私も彼らの後についていくことにした。
それからただただ奥へ歩くこと数分。
これまた大きな扉が見えてきた。
シヴィラと呼ばれた少女は扉を控えめに2回ノックした後、小さな声で
「シェロ爺様、お客様。」
といった。
すると勝手に扉が開き、薄暗い部屋の奥では人形をいじっているみたところ70前後のお爺さんがいた。
「…おぉ、宮崎ンとこの坊やか。よくきたのう、整備かぃ?」
「あぁ、うちの息子の人形とそれと新しいのをもう1体。」
「新しいのぉ?おぬしらはみな契約すんでおろう…が…?」
老人がこちらへ向き直り、私を見てピタりととまる。
「…ほう、なるほどのう。そういうことかい。シヴィラ、明かりをつけておくれ。」
少女が明かりのスイッチをつけると目が一瞬眩むほどのまばゆい光を後、部屋が明るく照らされる。
あたりを見回すと、部屋一面、天井、床、壁いたるところに人形が飾られていた。
「うわ、すっご…。」
「ほっほっほ、おぬし見たとこによるとこの子らを見慣れておらぬな?」
「はい…、こっちにきて初めて見たんで。」
「なるほどなるほど、どれ、好きなのを選ぶといい。どうせ金に関しては坊や持ちじゃろうからな。」
好きなのを選べと言われても、目移りどころかありすぎてどうしたらいいかわからない。
ロボット、少女、少年、メイド、執事、ぬいぐるみ、クマのはく製…。
剥製もありなのか…。
戦車、小さな軍隊。
ウサギが二足歩行してるものまで。
「シェロ爺、さすがにこの量から好きなのを選べというのも意地悪な話だと思うぞ?」
「なぁにをいう、見た目で選ぶほうが良いに決まっておる!」
……ガシャン!
ガチャ!
鍵を開けたような音が部屋中に鳴り響く。
上から気配を感じて上を見上げる。
「イヤッハァァァァァァァ!」
「え?」
私の上から声が聞こえ、デッサン人形が落ちてくる。
通常の大きさよりもかなりでかい…、っていうか成人男性と同じくらいの
大きさのが。
「ヤァァァァリィィィィィィ!」
「嘘ぉぉぉぉぉぉぉ!?」
私の上に落ちてきた。
「…大丈夫ですか?雪久様。」
反射的に閉じた目を恐る恐る開けるとシグマさんがそのでかいデッサン人形をキャッチしていた。
「あ、ありがとう…」
「いえ、どういたしまして」
キャッチされたデッサン人形は私の顔を見るとまた喜ぶような声を上げる。
先ほどよりはうるさくはないがやはりうるさい。
その人形をみて老人は固まっていた。
ついでにいうとその場の全員が固まっていた。
そんな空気などお構いなしにデッサン人形はしゃべる。
「やぁ、かわいこちゃん、あんたがおれの目を覚まさせてくれたのかい?いやぁ、感謝するぜぃ!40年間もあんな鳥かごの中にいたらこっちの気が狂うか狂わないかギリギリのとこでようやくあの鍵が開いてよう!嬉しさの勢い余って飛び出しちまったぁ!おれっちとしたことがとーんだドジしちまったぜ!」
しゃ、しゃべるな、このデッサン人形。
なんか、あれだ、ランプの魔人みたいな感じだ。
「…まさか、こいつが動き出すとは。」
「しかも、自分から喜んで動き出すとはのぅ。この子は特別な血統の子かぃ?」
「少なくとも私の知るところではこの子の親は普通だったぞ。」
「あ、あのぉ、この人形は一体?」
デッサン人形はいつの間にか私の隣に陣取っていた。
デッサン人形、口も目も表情もないデッサン人形。
それが私の隣で口笛を吹いている。
「あんたの名前は?あぁ、まずはおれから名乗らないとな、おれはパペット!これからよろしくな!相棒!」
みんなは引いているが、私は案外こいつのノリが嫌いではない。
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