ぶっとんだ世界の可動人形【フィギュアステップ】

アマギ

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第4話 王の器

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--------- 第4話 王の器 ----------
唐突に天井から降ってきたこのデッサン人形・・・。
どうやら、長年動くことなく天井からぶら下がっている鳥かごの中に閉じこもっていたらしい。
彼(?)が先ほど口走っていた言葉の中では40年ぶりと言っていた。
その言葉から察するとこのパペットは40年以上前にもう制作されていたということになる。
しきりに私が頭のなかで考えを巡らせている間もパペットはしゃべり続けている。
「あんらぁ、難しい顔してどうしたの?人間もっと明るくハッピーに生きなきゃ損損!しかもそんなおっかない顔しているとせっかくの可愛い顔が台無しだぜ?ほぉら、笑って笑って、その可愛い顔を俺っちに見してくれよぉ!」
・・・うるせぇ・・・。
「・・・うるせぇ・・・。」
「へ?」
「こちとらお前が出てきてそんなまくし立てられても頭と心の整理がおっつかねぇんだっつの!すこし黙ってろ!」
「う、うぃっす。」
そこまで言い切ると深く息をつく。
そしてシェロ老人へと私は向き直り、パペットについての質問を投げかけた。
「シェロさん、これは一体何なんです?」
「あ、あぁ・・・。そいつはパペット。いわばこの人形フィギュアたちのベースになったものじゃ。いつ、どこで、誰に制作されたのは全くわかっていない。記録としてわかっているのはこうして度々起動し、主を見出しともに過ごしたという記録だけじゃ。ただ、おかしな点がいくつかあってのう。」
そこまで言い切ってシェロ老人は言葉を濁す。
まるで何かを隠しているみたいに。
私は追求はせず、シェロ老人の目をまっすぐに見つめる。
そして、数分の時が経つ。
シェロ老人が観念したかのように口を開いた。
「・・・このパペットが起動したその時代、必ずと言っていいほど世界に国がたったのじゃ。しかも、その国王には必ず、人形のような美しい顔立ちをした臣下がいたそうじゃ。これを偶然と決めつけ見過ごすほどこのシェロ、馬鹿ではない。」
そこまで聞くと私はパペットの方へと向く。
そして彼にこう言ってみた。
「パペット、その姿を変えることはできるのか?」
「・・・さぁ、どうだろうねぇ。俺っち自身、鏡にうつる自分の姿なんて確認したことないんでね。俺っちはどうあっても俺っちだから容姿がどうとかはべっつに関係ないさぁ。」
首を振りながらパペットは陽気に答えた。
そしてまた踊るように私の隣へと寄ってくる。
「随分となつかれているようだな。」
龍さんが私達の姿を見てそうつぶやいた。
その言葉に私は少しムッとなりながら隣のパペットの姿を見る。
パペットもこちらの方を向いている。
相変わらず表情がないので笑っているのかは分からないが、なんとなく予想はつく。
絶対、ドヤ顔してる。
「ううむ、またパペットが動き出したという報告をセントラルの方へしたほうが良いな。わしも一度セントラルへ行き、40年前の資料を取ってくるとしよう。となれば善は急げじゃ。わしはここをしばらく留守にする。シグマのメンテナンスは又の機会ということになるが大丈夫かね?」
シェロ老人は譲さんの方へ問いかける。
譲さんは相変わらず綺麗な笑顔で言葉には出さなかったがおそらく構いませんよということなのだろう。
「シヴィラ!しばらくの留守は任せたぞ。」
「はい、シェロ爺様。行ってらっしゃいませ。」
部屋の隅にいたシヴィラさんはすっと頭を下げた。
そしてそそくさと準備をすると私達よりも先に工房から出て行ってしまった。
その姿を見て龍さんは苦笑いを浮かべていた。
「マスター、雪久様に契約のことを説明したほうがよろしいのではないでしょうか?」
「それもそうですね、じゃあこの際だから契約の説明してしまいますね。」
譲さんが私へと近づいてくる。
そして、自身の左腕の袖を捲り腕を見せてくれた。
そこには幾何学模様で描かれた字のようなものがぼんやりと青白い光を放っている。
「これが人形フィギュアとの契約をする際に描かれる契約印です。契約の仕方はさまざまで私の場合はシグマの胸部装甲の中にあるコアに触れることでした。父上は・・・」
「私は彼女たちに菊の花を渡して契約となった。印は背中にあるものでな、今度一緒に風呂でも入った時に確認するといい。」
人形フィギュアの形や種類によってまた違ってくるということらしい。
この2人の契約の仕方は普通に納得がいく。
問題はこのパペットだ。
契約の仕方が全くわからない。
いや、ヘタをするととんでもないものかもしれない。
するとパペットが私の元から離れ、近くの鎧が飾られているところへ向かう。
そして、その鎧の腰にささっている剣を抜くとこちらへ戻ってきた。
「俺っちと契約するのならこれが必要なんでな。ほい。」
パペットは持っている剣を床に突き刺した。
そして、片膝をおり片膝を立ててしゃがみ込む。
「その剣で俺っちの両肩を2回ずつ軽く叩いてくれりゃ、契約成立よ。」
気は進まないが、まぁ、こうなってしまったら私が契約するにほかないのだろう。
私は剣を引き抜き、パペットの肩を2回ずつ軽くトントンと叩き、もう片方の肩も同じように叩く。
すると、紫の糸のようなものが剣から私の腕を伝い、首筋を伝って首の後ろ側で集まり印を描き始める。
「・・・な、・・・者の・・・う・・・誕・・・。」
パペットが小さな声で何かをつぶやいたが印のことばかりに気を取られうまく聞き取れなかった。
そしてやがて紫色の光は消え、淡くぼんやりとした白い色へと変化し、収束し消えた。
どうやら契約の儀式はこれで終わりらしく、首の後ろを軽く手でさすって確認してみる。
とくにでこぼとしたものはなく至って普通。
なにも変わりはなかった。
すると譲さんが工房にあった少し大きな鏡と自分の持っていた手鏡をシグマさんに渡し、こちらへ駆け寄ってくる。
「雪久様、少し失礼致します。」
そういってシグマさんが私のうしろ髪を軽くまとめ鏡を持つ。
前から譲さんが手鏡をもち後ろの鏡をうつす。
鏡には白くぼんやりと光る印がうつしだされていた。
・・・王冠をかぶったドクロの斜め右下、斜め左下から剣が突き刺さっている契約印が・・・。
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