皇女は世界を謳歌する

らら

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第18話

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サハラに着いたのは、まだ日が明けるちょっと前。濃度の濃い霧が街を覆っていて、よく見えない。周りはひんやりとしていて、ぶるっと身震いをしてしまう。

「お前もギルドに用事だよな。そこまでは一緒に行ってやろう」

アルは霧で中々見えない中、何もかもが見えるみたいにスタスタと歩いていく。
ここに何度も来たことがあるのかな?と思うぐらい慣れがある。
その時、ガン!すっごい痛そうな音がした。アルは、電柱に思いっきり頭をぶつけたみたいだ。

「ふふ」
私は思わず口を押さえて笑う。

「何笑ってる。こっちは痛いんだぞ」
「あと、お前、俺の目の前にいろ」
嫌そうな顔をしながらも、アルは私の腕を強引に引っ張って自分の前に持ってきた。

アルに指示されながら、道を歩いていく。マラチュのうように、地面が整備されているわけじゃないなら、たまに小石に躓いたりして歩きにくい。

暫くそんな調子で歩いていると、目の前にうっすらと浮かぶオレンジ色の光が現れた。ギルドの灯りだろうか?
私達はその光に導かれるように、足を進めていく。

「ついたぞ」

ギルドはマラチュにあったギルド本部とは違って、木造で今にも木の破片が落ちてきそうだ。単純に言えば、ボロい。
バキバキギギと幽霊屋敷にありそうな音を出す扉を開け、歩く度にメシッギシッと音を出す床を1歩ずつ歩く。

カウンターには、受付嬢ではなく、白髪で皺が顔に目立つお爺さんがいた。

「依頼を受けに来たのかい?」

低く震えた声でお爺さんは問う。

「ああ」

「最近は強い魔物が増えてな。冒険者の中で死人が出てるんだ。だから、ソロでは受け付けてなくてな。お2人さんは丁度いいから、パーティー組んだらどうだ」

「…」

暫くアルが私の事をじっと見る。
私も、ん?なんだろう。と思いながらも目を合わす。

「はい。パーティー組みます」

「そうか、じゃあ、この紙に名前を書いてくれ。それと、パーティーで受けられる依頼はパーティー全員の平均のランクまでじゃ。クリア報酬はここでは出せないから、違うとこに行って受け取ってくれ」

軽くパーティーの説明を受けた後。

「お前ランク幾つだ」

「Gよ」

「はぁ…お前冒険者始めたばかりだもんな」

アルの顔がちょっと曇った。

「俺はCだから、受けられるのはEランクまでだな」

掲示板にあるEランクまでの依頼は5つ程度しかない。1番多いのがDからBランクの間の依頼だ。

1つ目 ────

ランク F 

サハラの東に位置する馬小屋の修理をお願いしたい。木材が湿気でボロボロになってしまっている。

報酬  銅貨 3枚

────

これは報酬が安すぎ。
きっと、誰も受けないでしょう。

2つ目────

ランク G 

女体を見せろおおおおおおおおお

報酬 大銅貨 1枚

────

素直に気持ち悪い。

3つ目────

ランク D

サハラの西部に悪臭を放つものがある。それの原因を調べ、対処してくれ

報酬 大銅貨 1枚

────

今までみた依頼の中では1番これがまともな依頼だと思う。

「アル。この依頼はどう??」

「そうだな。1番マシな依頼だ」

どうやら、アルも依頼内容が酷いと思っていたらしい。

私達はさっきのお爺さんのところに行って、依頼は受け、原因の場所へと行く地図を受け取った。
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