皇女は世界を謳歌する

らら

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第19話 ☆

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シーラside

馬鹿王子と私は、行く宛も無いので、謎の男に言われた通り隣国のマラチュへといくことにした。

そこまで、この馬鹿王子と一緒に過ごす事が苦痛で仕方がなかったけれど、冒険者になったら、運命の人と出会えるかもしれない。

と、新しく始まる生活に不満を持ちながらも希望も抱いていた。


「はぁ…あっつい…」

汗をたらたらと流しながら、パスタニア皇国に入るための門を目指して歩く。

「シーラ。お前魔法使えないのか。水でも出せ」

馬鹿王子が気持ち悪いぐらいに汗を流しながら命令してくる。城を追い出されてからまともに、風呂も入っていないこの体は最悪だ。

今着ている服は庶民中の庶民のボロっぽい服。お城の中で身につけていた宝石やドレスは全て売りお金に替えた。とにかく今は生きることが大切だから。
そして、絶対あのクソ女に復讐してやるんだから…


門の前につくと、大きな槍と重たそうな銀の鎧を身に纏う兵士が2人いた。

「ここから先はパスタニア皇国です。入国料は銀貨1枚です。何か身分証のようなものはありますか?」

「身分証みたいなものは無いわ」

「き、きさまっ!私に向かってお金を徴収するというのかっ!!!」

はぁ…また馬鹿王子が騒いでいる。私はさりげなく、馬鹿王子の右足を思いっきり踏み潰す。

「いったっっっ!!!シーラ!何するだ!!」

馬鹿王子は自分の右足を手で抑えながら、必死に訴えかける。

いいざまだこと。

「黙れ。」

人を見下すような目で私は馬鹿王子を見る。そして、人が変わるようにパッと顔を変えて、笑顔で兵士に言う。

「すみませんね、連れはちょっと頭のネジがとんでしまっていって…」

「あ、ああ…そうか。じゃ2人の名前と出身地を書いてくれ。偽りを書いた場合は大罪にもなる場合があるから、本当の事を書けよ」

兵士は少し戸惑いながらも、紙とペン差し出す。

私は、紙に シーラ ナソパ国、ハイネ ナソパ国と記入した。
私たちは、国からも追放された身。もちろんラストネームなどない。

記入した紙と銀貨を2枚渡す。

「よし、銀貨2枚。二人分だな。よし、通っていいぞ。いい旅を」

ギギギと重たそうな門が兵士によって開けられる。

さぁ、復讐のはじまりだ。
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