サキュバスだって、愛を知っているの。

らら

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1話

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その夜も、私の家の周りにはたくさんの男達が狂ったような勢いで押しかけてきて、窓や扉が悲鳴をあげるほど叩かれていた。



「お母さん。怖いよ…」

暖炉の前で私は母にすがりついていた。家の外は、何事かと思うほど男達の叫び声。聞きたくもない色気のある声が飛び交う。まだ、幼い私はこの状況にただただ怯えていた。

「大丈夫よ。リア…。貴方はリリス様の力が強いだけよ…。誇りに思うことよ。大丈夫。貴方は必ず私が守るから」

お母さんが優しくそう言うと、私を包み込むように力強く抱きしめた。
お母さんの腕の隙間から見える暖炉の火がパチパチと私達を照らす。

「おい!そこにいるのは知ってんだよー!早く出てこいよー!」
家の外から男の叫び声が響いた。

その時、私とお母さん。どちらもブルっと寒気と恐怖が襲ったのを覚えている。お母さんは血相を変えた。

「リア。よく聞いて。そこのクローゼットの中に入りなさい」

お抱きついていた手を背中からずらして、腕を掴み、いつもよりちょっと怖い顔で語りかけた。

私はその理由が明確には分からなかったけれど、今はただごとではない。ってことだけは幼ながらも理解出来た。

「この中に入ったら貴方は別の世界にいくわ。ここの世界は魔力が強すぎるから、貴方の特別な力が強いの。だから、魔法少ない世界にいくの。お母さんは行けないけど、あなたをずっと愛してるわ。だからいって」

私をもう一度強く抱きしめて、私をクローゼットの中に入れた。
その時のお母さんの顔を今でも忘れない。

「お母さん…やだ…一緒に行こう!」

「ごめんね。リア…。このクローゼットの中には1人しか入れないの…」

ガンガンガンガン

外からハンマーか何かで、壁を叩き壊そうとする音が聞こえる。

「さぁ、急がないと」

「でも…」

「お願い。リア。私じゃあなたを守れないわ。これがあなたの最善策よ…。また必ずどこかで会えるわ」

「お母さんと一緒じゃなきゃ…」

「リア!!お母さんを信じて!」

私は顔から沢山でる涙をぬぐい歯を食いしばって、うん。と頷いた。

「リアいい子よ。貴方は私の自慢の娘よ。必ずまた会えるわ」

「愛してるわ」

「私もお母さん…っ」

最後にぎゅっと強く抱きしめ合った。

そんなとき、さっき壁を叩いていた男達が家に侵入してきた。どうやら、壁が壊されてしまったみたいだ。

お母さんはクローゼットの扉を閉めた。

扉が閉まるまでの間、私はお母さんが男達に囲まれてしまう所までは覚えていた。

私はしっかりと持たせられていた荷物を抱きしめて、目を閉じた。

「お母さん…ありがとう」
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