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「もしかして付け回してました?」
「好きな人が何をしているか気になるだろう」
「普通の人なら会える日を心待ちにしながら待機するものだと思います」
「何言ってんの、急がなきゃいけない理由があるから急いだんだ」
「………どういう意味で?」
「またその顔……」
「顔……って」
「冷たくて綺麗で秘密を湛えた顔、気を付けた方がいいよ、僕は出遅れた分独占欲の塊になっているんだ、何をするか分からないよ」
「……一体…俺にどんな秘密があるって言いたいんですか?」
「俺が中に入れない事をいい事に……」
「中に入れない?!」
黒江と会う時は今も昔もほぼ100%レンタルスタジオだ。防音ドアはガッチリしてるし狭いしそりゃ入れない。つまりはそういう事だ。
「前まで来てたって事?!いつ!」
「出来うる限りだ、悪いか!」
悪いよ!!
これはもっと問い詰めたら何が出て来るかわからないヤバさだけどクリスは隠す気もないようだった。
「中に入れないし覗き見も出来ないのに何しに来るんですか、大体どうやって…」
「どうって……」
クリスの目がチラリと動いた先には「2台」のスマホが重ねて置いてあった。
動いたのは同時だった。
2人でダイブをして勝てたのは距離と座り方のおかげだ。
一台は最新型、もう一台は随分と古い型だが手に馴染む程見覚えがある。つまり高校の時から使っている自分の物と同じだ。
キッと睨みつけてスマホの画面を翳した。
「パスコードは?」
「え?」
また汚れのない素の顔だ。
「パスコードを言ってください」
「……僕の誕生日」
「知るか!!」
「指をかせ」と飛び掛かった。
キャアと喚いて嬉しそうに笑う辺り、さほど深刻には受けてめていないのかもしれないが、握り込んだ拳から親指を取り出すにはそれなりの苦労があった。
「嘘……何これ…」
パッと出て来た画面は一見したら普通だったが少な過ぎるアプリの配列は自分のスマホそのものだった。
試しにLINEを開けてみると母とか黒江とか…知っているメッセージが並ぶ。
「こここれ…」
「うん、クローン?」
テヘって笑うな。
情け無いくらい見られて困る事は無いけど!
母と黒江しか連絡ないけど!!
「いつ?!どうやって?!普通に犯罪じゃ無いですか!何の為に?!」
「趣味と見張りと蓮の顔を見る為だけど?」
「見張り?見張り?見張りって?!一体何を見張るんですか!」
「そりゃあいつが……あいつが……クソ思い出したらムカついて来た」
「今から行ってぶっ殺して来る!」と立ち上がったこの人は即決即断、即実行を地でやっている。
本気かどうかは置いといても足にしがみついて止めるしか無かった。
「黒江さんを巻き込まないで!」
「俺の蓮を汚されたんだ、黙ってられない!」
「クリス!」
引き摺られても離すもんかと長い足にしがみ付いていた。しかし、気が付けば移動してない。
上下の激しいクリスのテンションは全く読めないのだ。あれ?と思って這ったまま見上げると、クリスが目を丸くして見下ろしていた。
「……冗談……だったんですか?
「冗談じゃ無いよ」
スッと腰を落としたクリスが左手を取ったから起き上がれなくなった。
大の字で腹這いと、片膝を付いた宝塚スタイルの煌びやかな男。
この構図は何だと思うけど、取られた左手を恭しく包むから身構えてしまって動けなかった。
クリスの強い眼差しには石化の成分も入っているのだと思う。
「今……クリスって呼んでくれたね」
「……だって」
「さん」を付ける余裕は無かった。
どうやら数年間の、素行調査を経て散々周りを彷徨いた上に使者を派遣してまで陥れ、勝手に合鍵持ってるようなストーカーに先輩としての敬意は無い……
…と言ってやりたかったけど海老反りの体勢では腹筋と背筋がツラかった。
取られた左手はクリスの手に乗っているだけなのだから少し引けば簡単に取り戻せるけど、今までに無く真面目の圧に押されて動けない。
するとゆっくりと勿体ぶるように身を伏せたクリスが手の甲に唇を落とした。
「何…」
「何回も言ったけどもう一度言うよ、好きなんだ、付き合って欲しい」
「……また…それですか…」
「はいって…言って」
物凄く真剣で、物凄く綺麗な目は視線を逸らす事を許してくれない。
触れてほしく無い一面に手を掛けられ、恋人どころか友達すら殆どいない天性のボッチには丁度いい解なんて無かったのだ。
ここで「はい」と言う以外の選択肢はあったのだろうか。
「好きな人が何をしているか気になるだろう」
「普通の人なら会える日を心待ちにしながら待機するものだと思います」
「何言ってんの、急がなきゃいけない理由があるから急いだんだ」
「………どういう意味で?」
「またその顔……」
「顔……って」
「冷たくて綺麗で秘密を湛えた顔、気を付けた方がいいよ、僕は出遅れた分独占欲の塊になっているんだ、何をするか分からないよ」
「……一体…俺にどんな秘密があるって言いたいんですか?」
「俺が中に入れない事をいい事に……」
「中に入れない?!」
黒江と会う時は今も昔もほぼ100%レンタルスタジオだ。防音ドアはガッチリしてるし狭いしそりゃ入れない。つまりはそういう事だ。
「前まで来てたって事?!いつ!」
「出来うる限りだ、悪いか!」
悪いよ!!
これはもっと問い詰めたら何が出て来るかわからないヤバさだけどクリスは隠す気もないようだった。
「中に入れないし覗き見も出来ないのに何しに来るんですか、大体どうやって…」
「どうって……」
クリスの目がチラリと動いた先には「2台」のスマホが重ねて置いてあった。
動いたのは同時だった。
2人でダイブをして勝てたのは距離と座り方のおかげだ。
一台は最新型、もう一台は随分と古い型だが手に馴染む程見覚えがある。つまり高校の時から使っている自分の物と同じだ。
キッと睨みつけてスマホの画面を翳した。
「パスコードは?」
「え?」
また汚れのない素の顔だ。
「パスコードを言ってください」
「……僕の誕生日」
「知るか!!」
「指をかせ」と飛び掛かった。
キャアと喚いて嬉しそうに笑う辺り、さほど深刻には受けてめていないのかもしれないが、握り込んだ拳から親指を取り出すにはそれなりの苦労があった。
「嘘……何これ…」
パッと出て来た画面は一見したら普通だったが少な過ぎるアプリの配列は自分のスマホそのものだった。
試しにLINEを開けてみると母とか黒江とか…知っているメッセージが並ぶ。
「こここれ…」
「うん、クローン?」
テヘって笑うな。
情け無いくらい見られて困る事は無いけど!
母と黒江しか連絡ないけど!!
「いつ?!どうやって?!普通に犯罪じゃ無いですか!何の為に?!」
「趣味と見張りと蓮の顔を見る為だけど?」
「見張り?見張り?見張りって?!一体何を見張るんですか!」
「そりゃあいつが……あいつが……クソ思い出したらムカついて来た」
「今から行ってぶっ殺して来る!」と立ち上がったこの人は即決即断、即実行を地でやっている。
本気かどうかは置いといても足にしがみついて止めるしか無かった。
「黒江さんを巻き込まないで!」
「俺の蓮を汚されたんだ、黙ってられない!」
「クリス!」
引き摺られても離すもんかと長い足にしがみ付いていた。しかし、気が付けば移動してない。
上下の激しいクリスのテンションは全く読めないのだ。あれ?と思って這ったまま見上げると、クリスが目を丸くして見下ろしていた。
「……冗談……だったんですか?
「冗談じゃ無いよ」
スッと腰を落としたクリスが左手を取ったから起き上がれなくなった。
大の字で腹這いと、片膝を付いた宝塚スタイルの煌びやかな男。
この構図は何だと思うけど、取られた左手を恭しく包むから身構えてしまって動けなかった。
クリスの強い眼差しには石化の成分も入っているのだと思う。
「今……クリスって呼んでくれたね」
「……だって」
「さん」を付ける余裕は無かった。
どうやら数年間の、素行調査を経て散々周りを彷徨いた上に使者を派遣してまで陥れ、勝手に合鍵持ってるようなストーカーに先輩としての敬意は無い……
…と言ってやりたかったけど海老反りの体勢では腹筋と背筋がツラかった。
取られた左手はクリスの手に乗っているだけなのだから少し引けば簡単に取り戻せるけど、今までに無く真面目の圧に押されて動けない。
するとゆっくりと勿体ぶるように身を伏せたクリスが手の甲に唇を落とした。
「何…」
「何回も言ったけどもう一度言うよ、好きなんだ、付き合って欲しい」
「……また…それですか…」
「はいって…言って」
物凄く真剣で、物凄く綺麗な目は視線を逸らす事を許してくれない。
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ここで「はい」と言う以外の選択肢はあったのだろうか。
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