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鈍色の空
しおりを挟む数日前からそれはあった。
下腹部を覆うような鈍い痛み。なんとなく気分も重く、見るもの全てが灰色に薄くけぶっている。窓の外も雨が降り出しそうな鈍色の空が広がっていた。
雨が降る前にと急いで始めた庭の手入れ。雑草と一緒に貴重な寒色リリアの若芽を引きむしってしまった。慌てて埋め戻すと後ろにあった小石を強く踏み抜いてしまい足裏を痛めた。
足はずきずきと痛み、湿気をたっぷりと含んだ風は今にも降りだしそうな雨の気配を伝えてくる。今日はちょっとついていない。
軒下の段差に腰掛け足裏を擦っていると太股の付け根、鼠蹊部辺りにひりつく痛みを感じる。そういえば今日は朝から腹が重く鈍く痛い。それに今はなんとなく下ばきが湿る気がする。
違和を感じながら立ち上がると、急激に体内から何かがまとまった量となって流れ出る感覚があった。違和を感じた私は慌てて近場の厠に駆け込んだ。
*
ついにそれは来た。
ぽたたっと音をたてて落ちる赤い滴り。
水中を揺らぐ赤い固まりは底面に留まり水をゆるりと赤く染めていく。
それを認めたあと私は急に怖くなった。
急に変化が訪れた自分の身体。自分の思惑とは違う、見たことのない光景。
子ども時代の曖昧な属性と完全に切り離されるであろうこの現れに、これから起きうることに身震いがした。
そして相反する感情も抱いた。
これでテオに愛される、テオを愛することができると。
テオの隣にいる正当性を得られたような気分になった。
テオはまわりに慕われていた。異性や同性にも求めらているだろう。私は最後まで行為が進まないことに不安を感じていた。
それに屋敷では口にされないが強く望まれているテオ似の子ども……を産めるようになるかもしれない。
また、一方で母と弟のカイルの姿が浮かんだ。取り上げ時に血にまみれていたカイル。熱を持ちながら沈黙してゆく母の身体。子どもなんて私に産めるのだろうか。想像するだけで、とても怖い。
方々に乱れ飛ぶ思考や感情について自分でもよく分からなくなっていた。私は初めての事に気も動転し体調も不安定だったのだ。
私は近場にいたハンナに助けを乞い、経血の始末の方法や、この時期の過ごし方、薬湯の煎じ方など先達からの教えを受けた。
しばらく身体が重く動けない。腹も頭も痛くこんなに苦しいとは。
居室で横になっていた私にテオが会いに来た。ハンナから聞いたのか入室が遠慮がちだ。姿を見つけて起き上がろうとすると制止された。
「気分はどう?」
「あまり良くは……」
そうかと呟くと、しばらく落ち着かないのかそわそわして
「おめでとうと言った方がいいのか、わからないけど……」
耳元でそっとお祝いらしい言葉を言ってくる。初めて耳にする言葉で意味がわからない。戸惑っていると
「隣国の言葉。こんな時は言葉を贈るいいとハンナに聞いてさ、汝身体健やかたれという意味なんだ」
体格の良い身体をすくめて恥ずかしそうに言う。
「横に入ってもいいかな?」
頷くと横になってきた。
横たわるテオに少し身体を寄せると硬い手が髪に触れてくる。
髪を撫でるテオの手が優しくて、何だか照れくさくてはずかしい。もうお互いの身体や感じ入る姿を見ているのに。
引き寄せられているうちにいつの間にか二人で寝入ってしまった。
*
初潮がきてしばらくするとひょろひょろだった身体に肉がつき始めた。カイルの乳母とまではいかないが身体はふっくらと丸みを帯びていく。
父の屋敷で魔女扱いされた母ともに距離をおかれ放置されていたおまけの私がひと目を引くようになっていく。それはこれ以降のことだった。
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