僕の分断面、その欠片と

balsamico

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僕の分断面

僕の欠片 2

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最初は性的なからかいだった。
放課後に教室でズボンを脱がして何人かの男子の前で性器を露出させた。


むき出しになった、いもじゃの性器は白くて、ぼってりとして、皮からのぞいた先端が赤みを帯びていた。


足や腹もやけに白くて陰毛の毛の黒さが際立っていた。


学校で見た、いもじゃの性器があたまから離れない。興奮したらあの性器はどんな風に変化するんだろう。また見てみたかった、触れてみたかった。


一人で、いもじゃを農作業小屋に呼びだして、埃臭い場所で性器を露出させた。


刺激を与えるとむくりと立ち上がって、こすりたてると更に硬さを増していく。


屈辱を感じていたらしい、いもじゃも、二人きりという状況に安堵したのか、与えられる刺激に次第に感じはじめていた。竿は膨らみ、先端は露で濡れていた。


二人で性器を挟んで相対し、双方とも息を荒くしている。


手でいもじゃの性器を掴み上下に擦りたてた。手がリズミカルに動く度に、いもじゃが漏らす荒い呼吸が僕の髪を揺らす。


手の中で性器は涙を流し、膨らみ弾けた。消毒液のような臭いがあたりに広がる。


澱のような重くて静かな沈黙が広がる中、二人とも無言になる。手の汚れを拭うため、拭ける物を探して辺りを見回していたら


「お前、俺のこと好きなんだろ」

上気した顔を向け、いもじゃがうわずった声で僕に言う。


突然の上から目線、無性に腹がたった。
僕はいもじゃのシャツに汚れをなすりつけ、白い足を蹴飛ばし小屋を飛び出した。





自分たちはよく分からない関係のまま、身体をつなげあった。


家の物置や、山中の狩猟小屋、廃屋、僕の部屋、いもじゃの家。人気の無い場所を求めてあちこちを彷徨った。


最初の失敗を繰り返さないために親の部屋から避妊具を失敬した。


あの後、僕は性器が痒くなり、いもじゃは腹をくだしたそうだ。
精液は体内に残すと下痢をするらしい。雑誌に書いてあった。


日焼けの熱冷ましジェルを中に入れ十分に慣らす。いもじゃも洗浄をおぼえて僕と会う前にはきれいにしてきた。


今日は誰も居ないという、いもじゃの家に来ていた。いもじゃの家は元々祖母が一人で住んでいた。
都会に出ていたいもじゃの父親は、離婚後いもじゃを連れ実家に戻ってきたのだ。
 

親戚から漏れ聞く情報だと仕事か事業に失敗したらしい。


祖母は長いこと入院しており女手がない。いもじゃのもっさりした頭髪も、くたびれた衣服もそれで納得がいった。


古いこじんまりとした線香の染みこんだ年寄り臭い家の部屋の畳の上でちちくりあう。


唇を重ね合いながらお互いの服を脱がす。手は相手のどこかに触れ、常に刺激し合う。


名前の無い関係性。


以前はイジメの加害者、被害者、同級生だったが、今は違う。
今の自分たちは共犯者だ。共犯者が相応しい。





ある時、いもじゃとの関係が親にばれた。親の避妊具を持ち出していたのが発覚したのだ。


 1ダースも無くなっていたので、相手を追及されたが、僕は何も言わなかった。
弟の誠人がよく分かっていない癖に、僕がいもじゃと一緒にいるとバラした。


男同士だったし、同性に発情する息子は見たくないという勝手な親フィルターのおかげで疑いのまま解放された。いもじゃに会うなという制約付きで。


学校で会うとこっそりメモを渡し、落ち会う場所を決めた。


よく分からない関係から始まった自分たちの関係は、まるで悲運の恋人同士みたいだ。


肌の触れ合いや、快楽を覚えたばかりの身体に、触れ合えないというのはかなりの責め苦だった。忍び逢い、逢瀬を繰り返した。



遂に二人で一緒にいるところをうちの親に見つかってしまった。


別にまずいことはしておらず、ただ一緒にいて二人の距離が不自然に近かっただけだ。


自分はともかく、いもじゃが責めたてられた。
ここでも親フィルターが発動していた。

 
うちの子どもが誘惑するはずがないと。家庭環境が悪い家の子《いもじゃ》に誘惑されたんだと。


親も本家の威光をかさにきていた。いもじゃには本家のご威光なんて関係ないのに。
自分も過去にいもじゃに同じことをやったのに、他者の行為は愚かに見えた。


親の罵声に我に返ると親がいもじゃをつるし上げている。
誘惑して汚らしいと罵ってる。


違う。誘ったのは、いや、嫌がるいもじゃを行為に引きずり込んだのは僕だ。


自分がいもじゃに惹かれたから。
いもじゃは悪くない。


何も言えなかった。
涙が出てきて何も言えなかった。
いもじゃは何も悪くないのに。


いもじゃも泣きそうだ。
僕を見て助けを求めている。
僕は親が怖くて、状況が怖くて何も言えなかった。


母親のうちの子に近づかないでという怒鳴り声が聞こえた後は記憶がフェードアウトしてしまい、事件のその後について僕は何も覚えていなかった。


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