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邦陽
決別
しおりを挟む反応が薄くなった僕に飽きてきたのか罪悪感を覚えたのか春臣の部屋に呼ばれる回数は減っていた。
それに比例するかのように僕の体はどんどん変化していった。
成長痛という痛みを伴いながら伸びる手足。寝ても寝足りず、食べても食べても腹が空く。
同級生達も同様でいつも腹を空かせていた。底なしの食欲にブラックホールみたいだと自嘲していた。
春臣はちょくちょく女の子を部屋に連れ込むようになっていた。バカ騒ぎの後、廊下伝いに微かに漏れる嬌声。
ヘッドホンをあて音楽で何も聞こえないようにした。勉強に集中し情報を遮断した。
乱暴されても痛い思いをしても、今よりまだましだと思った。
女の代用、自分である必要性が無かったとしつこく認識させられる現状よりは。
心が切り刻まれるようなこの環境から一刻も早く逃れたかった。
ここから脱出する方法は、就職するか、ここから通えない学校に進学することだった。
資金については当てがあった。
両親の死亡原因は交通事故で多額の賠償金が支払われていたようだ。
小父さんから大学進学について話が合った時に言われた。行きたい大学に行きなさいと。親が残した金額はどんな学校に行っても、海外に留学しても全く問題はなさそうだった。心配はない。
それなら、ここから抜け出せて、春臣に会わずに済む遠方の学校に進もうと思った。
その学校に行く理由にそこしかない、ふさわしい学部を受験することにした。
学校のほか予備校に通いだした。
他校のできる生徒と一緒に講義を受ける。配布されたテキストを参考に授業で配布されたレジュメを完璧になるまでやり込む。
手を抜くと置いて行かれる。ほどよい緊張感があってよかった。
予備校には女子もいて、ちょっとしたことで会話を交わすと華奢な肩のラインとか白い指先に目がいってしまう。
衣服から僅かに香る洗剤の匂いにドキドキした。
汗や埃臭い学校の男達と違って女子のまとう空気はきれいな気がした。
家に戻り勉強をしていると酔っ払った春臣に久しぶりにベッドに引きずり込まれた。
以前の嫌悪も大分薄らぎ、春臣のことはどうでもよくなっていた。体を貸し出すつもりで早く終われ、早く終われと願いながら、なすがまま身を任せた。
首筋に顔を埋めてくる春臣の髪から、ふっと女物の香水のような匂いがした。どうやら女と一緒に居た後に来たようだった。
急激に嫌悪感がこみ上げてきた。女の後にそのまま抱かれるのは嫌だった。
「……さわるなっ!」
春臣を睨みつけ力任せに突き飛ばした。
春臣は床の上で座り込んで唖然としていた。
自分でも驚いた。あの春臣を突き飛ばせるなんて。
春臣は顔色を変えて、すぐに飛びかかってきた。首元のシャツを引き寄せられ頬を腹を殴られた
痛みで動けないでいるとシャツをたくし上げられズボンを引き抜かれる。
こんなのばっかりだと自嘲した。不思議なことに涙はでなかった。
春臣は指で僕の口をこじ開けると自分のものを突っ込んできた。
精液の臭いやら生臭い臭いが鼻につき、しょっぱい味がした。
これは事後だ。
誰かに突っ込んできた後、シャワーを浴びていない状態でそのまま僕の口腔に突っ込んでいた。背筋に冷たいものが走る。
春臣は勝手に腰を動かし、口内を蹂躙していく。僕は生理的嫌悪で飲み込めないでいる唾液を溢れさせながらシリコンホールになった気がした。
足を膝で割られ暗がりに硬度が増したものを押し付けられた。
久しぶりのそこは、自分でいじることも無くなったので、ゆるんでおらず、なかなか入らなかった。そこを無理やり力づくで進めてくる。
メリメリ身を裂かれる痛み、でも以前ほどの痛みは感じなかった。それは心を体と切り離すようにしていたから。
春臣は勝手に自己を増大させ、勝手に突っ込み抽挿し、勝手に射精する。
そこに僕は介在していなかった。
一方的に欲情を発露させ僕の上を通り過ぎていく春臣は凄く滑稽だった。無性に笑いたくなった。
自分の事が済むと春臣はさっさと自分の部屋に戻っていった。腹の上に吐き出したままの体液と、未到達の僕を残して。
生理的快楽が無いと言えば嘘になる。
長年の慣れのせいか無感覚の一時期よりは感じるようになった。
まだ立ち上がったまま取り残された自分のそれを片手で握り上下に撫でこする。
昔より大きく張った先端を親指で刺激すると、先走りで先端が濡れ指先が滑らかになっていく。腰の奥が熱い。唇が渇く気がした。
突き飛ばした瞬間の春臣。
僕に一瞬怯えた表情をした。その表情を思い出し僕は逐情した。
それから何回か春臣に強引に抱かれた。
そのたびに春臣のうなじを喉元を白い胸をイキ顔を目に焼き付けた。
遠方の難関大学と近場の私大を中心に併願を組んだことにした。
実際は遠方の一校しか受けなかった。高校卒業を機に屋敷を後にした。
新居や大学の授業形態にも慣れた6月。
突然新居に春臣が現れた。
俺から逃げられると思うなよとか散々言われ3日間ほど拘束されズタボロにされた。
数日の欠席に心配した友人がアパートを訪ねてきた。
春臣はスマホに届いた友人からの連絡を見て知っていたんだと思う。玄関のカギは故意に開けられていた。
一人暮らし、病に倒れているのではと心配した友人が部屋に上がってくるのは自明のことだ。
そしてそこで目撃することも。
もう嫌だと思った。
本当に駄目だ。
もう無理だと思った。
気持ちを踏みにじられて、新しく築いた居場所も踏みにじられた。
抵抗しなかった自分にも失望した。
誰も居なくなった部屋で天井の染みを見ながら涙が落ちるままに任せた。
数日後小父宛の手紙をしたため部屋を、学校を、春臣につながる全ての世界を後にした。
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